
「あの人って女かな?男かな?どっち?」と思ったことがあるすべての人へ
- 更新日:2020/09/22
- 公開日:2020/09/22
お盆休み最終日の本日。みなさまいかがお過ごしでしょうか?
私は屋久島に行ってまいりました。往復23キロ、約8時間にわたって山道を歩き、縄文杉を見に行くコースに挑みました。結果から申し上げると、かなり、屋久島をなめていたことを後悔しました。
山道がとにかく過酷すぎて、何度挫折しそうになったことか……。幸い、友達(A子とします)が山登りになれていたので、カロリーメイトを分けてもらったり叱咤激励してもらったりしつつ、なんとか登り切ることができました。野生のシカやサルも見ることができて、癒されました。
縄文杉に登った翌日、宿の近くのカフェでお茶をしていたのですが、そこで、A子が色白でほっそりした店員さんをちらっと見て、こう言ったんです。
「あの人って女かな? 男かな? どっちだと思う?」って。
性別が気になってしまうのはわかるけど…何気ない一言が誰かを深く傷つけることもある

私は、「さあ」と言って話題を変えたのですが、その言葉にひっかかったので、店を出てから、自分の感じた違和感をA子に打ち明けました。
以下、そのときの会話を再現します。
私「さっきのことやねんけど、よくないと思うで。そういうの」
A子「さっきのことって?」
私「店員さんの性別の話」
A子「え?」
私「や、そもそも、店の中やん。あれ聞いたら、店員さん、ショックやと思うで。なんとも思わん人もあるやろうけど、傷つく人も多いと思う」
A子「なんか、トランスジェンダー? って人なんかなーとかも思って。はじめて実際に見たから、びっくりして言っちゃって」
私「悪気ないのはわかってるで。でも、そもそも性別って男女ふたつでもないわけやん。どっちの性別か自分でも決められなくて悩んでる人とかもいるわけやし。本人がどっちの性別かっていう問題に、他人が踏み込むのはあかんと思う」
A子「たしかに。せやな。ごめん」
私自身も普段生活していて、内心「あの人ってどっちの性別なのかな」と思ったことはあります。性別は男女の二元論では分けられない(インターセックスやXジェンダーの人もいる)と頭ではわかりつつ、対峙している相手が、「女か、男か」がわからなければ、なんとなく落ち着かない感覚が、自分の中にあるのは事実です。
ただ、「どちらだろう」と思ってしまうのと、実際に口に出すのとには、大きな違いがあると思います。
なぜなら、実際に相手の性別がどちらか、を詮索する言葉を発することは、誰かを深く傷つけてしまう可能性があるからです。更に言えば、ジェンダーアイデンティティについてむやみに踏み込むことは、他人のプライバシーに土足で踏み込む事を意味している、ともいえるのです。
「自分の体は男だけれど、心は女だから、男として見られたくない」「女性だと思われるのも女性だと思われるのもしっくりこない」などの悩みを抱えている方にとって、「男? 女? どっちだろ?」という言葉は、たとえ悪意がなくとも、深く心をえぐる言葉になり得るのです。
「男性・女性、どっち?」。性別を聞くテレビ企画に批判殺到

性別を聞くことが相手を傷つける可能性があることや人権侵害になり得ることは、近年、認知度が広まりつつあるトピックのひとつです。
2019年5月10日、読売テレビの情報番組「かんさい情報ネットten.」では、見た目の性別がわかりづらい一般の方に対し、レポーターの芸人さんが、性別を聞き、保険証を提示させたり、胸を触ったりして性別を確認するという企画が放送されました。(※1)
企画は笑いを交えながら放送されましたが、生放送中、番組のコメンテーターである作家の若一光司さんが、「許しがたい人権感覚の欠如。よう平気で放送できるね。どういう感覚ですか、これ。報道番組として。ちゃんと考えろよ」と激怒。のちにTwitterで企画への批判と若一さんのコメントへの賛同が集まり、15日には、「どうしてこういった企画を放送してしまったのか」といった問題点を検証し、反省するコーナーが放送されることになりました。
令和に入ってまで、こういった番組が放送されてしまうことは非常に残念ですが、番組のコメンテーターがすぐに「この企画が差別や人権侵害につながること」に言及したことや、SNS上で企画に対して批判が殺到したことを見ると、ジェンダーアイデンティティにまつわるリテラシーは確実に高まってきているのだとも感じさせられます。
「あの人って女かな?男かな?どっち?」という質問は人権侵害に当たる、と知ろう

「あの人って女かな? 男かな? どっちだろ?」と気軽に聞いてしまう人は、きっと、これまで自分のジェンダーアイデンティティに迷ったことがない人・性別は男女ふたつしかないと思っている人・周囲に性的マイノリティーがいない人、なのでしょう。
そうした人にとって、「あの人って女かな? 男かな? どっちだろ?」という言葉が、どれだけ失礼なものか、という想像力が働かないのは、ある意味当たり前のことです。ですが、無知だからといって他人の人権を侵害したり、傷つけたりしてもいい、ということには決してならないでしょう。
※1 HUFFPOST 読売テレビのニュース番組、保険証の提示や胸を触って性別確認。「人権感覚の欠如」とコメンテーター激怒
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・「結婚したら同じ姓にしないとダメ」は女性差別?・「ピンク大好き!」な女の子を育てるときに注意したいこと
・「女らしさ」から自由に!「女らしさ」は女から自信を奪う秀逸なシステム
・結局、「女と男」どっちが得? を考える
・女性にかけられた「ブスの呪い」を解くのは誰?
▼著者:今来さんの他連載はこちら
・妊活・お金・介護・美容…40歳までに知っておきたいことリスト・【連載】なんで子供が欲しいの?
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