結婚

「結婚したら同じ姓にしないとダメ」は女性差別?

  • 更新日:2019/08/09

「結婚しました」と報告したとき、「名前は何になったんですか?」「なんとお呼びすればいいですか?」と聞かれた経験がある女性は多いでしょう。


現在(2019年8月)、日本では、結婚したカップルは戸籍上、同一の姓になる必要がありますが、日本以外の国では、ほとんどが選択的夫婦別姓や、結合姓(夫の姓と名前との間に旧姓をはさむなどし、ふたりの姓を併記すること)が認められている状況です。


今回は、夫婦別姓を選択できないことで、私たちにどういった影響があるのか、について考えていきたいと思います。


夫婦別姓が選べないことで女性が被る不利益とは?

苗字

まずは、夫婦別姓が選べないことで女性が被る不利益について確認しておきましょう。


法律では、男女どちらの姓にするかは規定されていませんが、実際、夫婦別姓が選べないことで、不利益を被るのは、圧倒的に女性です。


「結婚しました」と報告したとき、「苗字何になったの?」と聞かれる男性はほとんどいないでしょう。「結婚によって苗字を変えるのは女性でしょ?」「男性側が苗字を変えるなんて何か理由があるの?」と思われるのが現代の日本なのです。


ここでは、夫婦別姓が選択できないことで女性が被る不利益の一部をご紹介します。


夫婦別姓が選択できないことで女性が被る不利益の一部

・保険証、免許証、パスポート、銀行口座、株式の名義変更など、面倒な手続きをしなければならない。

・公の書類の名義変更は平日しか手続きできないことも多く、そのためにいちいち有給休暇を申請しなければならない。

・研究者など、名前と実績が紐ついている仕事をしている人にとって、名前が変わることは死活問題。これまで築き上げたキャリアがゼロになってしまうため、研究者同士のカップルなどは、籍を入れられず、事実婚を選択せざるを得ない状況もある。

・「戸籍は同じ姓にして、仕事などの社会的な場所では通称を使えばいい」という意見もあるが、そうすると別の不都合も生じる。たとえば、仕事関係の人と旅行に行くとき、相手が通称で航空券やホテルなどを予約してしまったために、スムーズに搭乗・チェックインできなかった、といったトラブルが生じることもある。

・名前は自分のアイデンティティの一部。これまで親しんできた姓を変えなければならないことに精神的苦痛を感じる人もいる。


「結婚によって苗字を変えるのは女性。それが普通」と考えている男女は多いため、何の疑問も感じずに受け入れている人もたくさんいます。実際、結婚している女性の友達に夫婦別姓についてどう思うかを問うたところ、「どっちでもいい」「日本って夫婦別姓にできなかったの? 知らなかった」という意見も多数聞かれました。


ですが、姓を変えることに対して精神的苦痛を感じたり、経済的なデメリットを被ったりしている女性も存在しています。


姓名とアイデンティティの関係に関しては、東京大学名誉教授の工藤庸子先生が、著書『女たちの声』(羽鳥書店)において、「姓と名が対になって初めて個人が社会的な存在として認知されるのだから、結婚によって夫と同じ姓になることを強要することは、女性の社会的アイデンティティの剥奪にもあたる」という旨の見解を示しています。


また、「戸籍で同一の姓とし通称を利用すればよい」という意見に対しては、以下のように述べています。


現在我が国で許容されている通称と戸籍名の併用なるものが、いかに法的な意味で不安定であり、しかも煩瑣で混乱を招き、物理的・精神的な負担となることか、これはアイデンティティの危機ですよ、現代日本はまるで「姦通小説」の時代のヨーロッパ(引用者注:姦通罪が存在し、夫婦別姓を選ぶことができなかった19世紀ごろのヨーロッパ)、やっぱり個人の「尊厳」の問題でしょう。(P.42)


国連は度々日本に、「女性差別にあたる夫婦別姓」を変えるように、と勧告している

夫婦別姓

工藤先生のように、「夫婦別姓を選択できないことは、女性の社会的アイデンティティの剥奪にもあたり、個人の尊厳を脅かす事案である。女性差別のひとつの形だ」と考える人は、日本では少数派かもしれません。


結婚しても女性側の苗字に変更する可能性がほとんどなく、不利益を被る可能性の少ない男性だけではなく、面倒な手続きをする必要がある女性でも、「どっちでもよくない?」と考えている人は少なくないように思います。


ですが、世界的に見ると、「夫婦別姓が認められていないことは、女性差別にあたる」とする考える人が多数派を占めています。実際、国連は、日本が1985年に批准した『女性差別撤廃条約』に違反しているとして、「夫婦別姓を取り入れるように」と繰り返し勧告を行っています。


夫婦別姓が選べる日は近づいている?

夫婦

2018年1月、株式会社サイボウズの青野慶久社長(結婚を機に、妻の姓に変更)らを含む数名が、夫婦別姓を選択できない法制度は法の下の平等に反するとして、国を提訴しましたが、2019年3月、訴訟は棄却されています。


世界的には、選択的夫婦別姓制度を取り入れないことは女性差別につながると認識されているのです。しかし、残念ながら、日本はグローバルスタンダードにはまだ追いついていません。


青野社長は、控訴する方針だと公表しているため、より良い方向に日本が変わることを期待しつつ見守りたいと思います。


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・「女らしさ」から自由に!「女らしさ」は女から自信を奪う秀逸なシステム
・結局、「女と男」どっちが得? を考える
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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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