マタハラ

マタハラ被害を訴えたい!マタハラ被害に対して何を請求できるの?

  • 更新日:2019/06/19

前回のコラムでは、マタハラ行為が法律でどのように規制されているのか、マタハラに関する法制度や法規定について解説しました。マタハラ防止のためにいろいろな制度が設けられていることがお分かりになったかと思います。

では、実際にマタハラ被害を受けた場合に、被害者は法的にどのような請求をすることができるのでしょうか?今回は、マタハラ被害の救済に関する重要判例と法的請求についてお話します。


マタハラ被害の救済に関する最高裁判決

裁判所

平成26年10月23日、最高裁判所がマタハラ被害の救済に関して重要な判決を下しました(広島中央保健生協事件)。

この事件は、副主任(管理職)という立場にあった理学療法士の女性が、妊娠中の軽易な業務への転換に際して副主任から降格され、育休終了後も副主任の立場に戻れなかったことから、勤務先の病院に対し、副主任の地位の確認や、管理職手当と損害賠償の支払を求めたものです。この事件では主に、病院の対応が、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止を定めた男女雇用機会均等法(均等法)9条3項に違反して無効になるかどうかが争われました。


最高裁判決のポイント

最高裁は、まとめると、妊娠・出産等を「契機とした」不利益取扱いは、原則として無効になり、①労働者の自由な意思に基づく同意、②業務上の必要性があり、かつ、均等法の趣旨及び目的に実質的に反しないと認められる特段の事情、という極めて例外的な場合に限り有効になると判断しました。


この判決は、①労働者の自由な意思に基づく同意があるかどうかは、客観的に合理的な理由が存在するかどうかによって判断されるべきであるとし、また、②業務上の必要性については、労働者に不利益取扱いを行わなければ業務運営や人員の適正配置に支障が生じるほどのものでなければならないしているので、例外的に不利益取扱いが許されるためには、非常に厳しいハードルが設けられることになったといえます。


この最高裁判決を受けて、厚生労働省による通達も出されましたし、最高裁判決以降、マタハラ被害を救済する判断を下した裁判例がいくつもあらわれています。


マタハラに対する法的請求

しいたけの中華麺

均等法9条3項に違反する不利益取扱い(解雇、雇止め、退職強要、降格、減給、賞与等における不利益算定、不利益な配転、不利益な人事評価等)や、妊娠・出産、育児等について上司や同僚から投げかけられた酷い言動などのマタハラに対しては、どのような法的請求をすることができるのでしょうか?


①違法無効な不利益取扱いに対する法的請求

マタハラによって解雇・雇止め・退職強要・降格がなされた場合には、労働者の地位確認請求や賃金請求をすることができますし、減給・賞与の不利益算定がなされた場合には、賃金請求をすることができます。

また、不利益取扱いにより労働者の財産的・精神的損害を与えた場合には、不法行為として損害賠償請求をすることも考えられます。


例えば、出水商事事件(東京地裁平成27年3月13日判決)は、原告の女性が産休中に突然会社から退職通知が送られて退職金が支払われたので、外部の相談窓口に相談したところ退職扱いは取り消されたが、女性が育休明けに復職しようとしたところ、「退職した方がいい」、「辞めた後の補充は終わっている」などと言われて復職を拒否された事案です。この事案で裁判所は、会社による違法な不利益取扱いを認めたうえで、会社に対し、復職拒否期間中の賃金の支払を認めただけでなく、産休中に退職扱いにして退職通知を送った行為が不法行為に当たるとして、慰謝料の支払も認めました。


②人格権侵害に対する損害賠償請求

妊娠・出産、育児等に関連して、上司や同僚等から投げかけられた言葉が、労働者の人格権を侵害するものである場合には、その上司や同僚等に対して不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)、その上司や同僚を雇っている会社に対して使用者責任に基づく損害賠償請求(民法715条)または職場環境配慮義務違反による債務不履行責任(民法415条)に基づく損害賠償請求をすることが考えられます。


例えば、ツクイマタハラ事件(福岡地裁小倉支部平成28年4月19日判決)は、介護施設に勤務する女性が、妊娠により入浴介助や衣服の着脱等ができないと所長に相談したところ、所長が「制服も入らんような状態でどうやって働く?」、「妊婦として特別扱いするつもりはない」等の発言をした上、その後も入浴介助や車いすを抱えて階段昇降を行う送迎等の業務を命じた事案です。この事案で裁判所は、所長の発言は相当性を欠き配慮が不足していると認定して、妊産婦労働者の人格権を侵害するものとして慰謝料の支払を認めました。

しいたけの中華麺

以上にお話したマタハラ被害の救済に関する裁判例は、ほんの一部にすぎません。最高裁判決が出されてからは、以前よりも、マタハラ加害者に対する裁判所の判断が厳しくなったように感じられます。なかなかマタハラ被害がなくならないのが現状ですが、今後もマタハラ被害を救済するいろいろな裁判例が出てくるように思います。

生まれてくるお子さん、すくすく育っているお子さんのためにも、マタハラ被害を受けたと感じている女性は、泣き寝入りせずに、思い切って声を上げてみてください。そうすれば、手助けしてくれる人はたくさんいますし、もちろん弁護士も最大限のお手伝いができますよ!



■弁護士に聞いてみた|バックナンバー

そのマタハラは法律違反です!マタハラに関する法制度・法規定

マタハラのタイプと被害の実態について弁護士に聞いてみた

セクハラに遭ったらどうすればいい?セクハラの対処方法を弁護士に聞いてみた

これってセクハラ?セクハラの法的な意味を弁護士に聞いてみた

パワハラ被害を訴えたい!弁護士ができること・依頼する時のポイントは?

弁護士に聞いてみた
  • 田中雅大 (弁護士/第二東京弁護士会所属)

    1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。

この記事がいいと思ったら
いいね!しよう

Related関連記事

Pick Up編集部ピックアップ

Rankingランキング

#tag