育児

育児や介護などの「ケア」は、なぜ女性がすることが多いの?

  • 更新日:2019/06/07

「イクメン」は、2010年の「新語・流行語」に選ばれ、タレントのつるの剛士さんが受賞者として選ばれました。

自分の子供を育てているだけなのに「イクメン」だと賞賛される風潮は、これまでどれだけ女性側に育児の負荷が偏っていたか、の証明と言えるかもしれません。


イクメンという言葉が認知されてから約10年たった今、育児を積極的に行う男性は着実に増えてきています。しかし、未だに「母親がちょっと子供をおいて出かけただけで非難されるのに、父親は子供と遊んだだけで、いい父親扱いされる」など、育児に対する男女の期待値には差が見られるように思います。

『ジェンダーで学ぶ社会学』(世界思想社)では、育児や介護といったケア労働は、これまで圧倒的に女性に偏ってきたことが指摘されています。

なぜ育児や介護は女性の仕事だと見なされてきたのでしょうか? そして、それはこれからも変わることがないのでしょうか? 今回は、本書を参考に、ケア労働と性差の関係について考えていきたいと思います。


育児・介護などのケア労働が「女性の仕事」になっているのはなぜ?

疲れた女性

平成29年の厚生労働省の調査によると、女性の育休取得率は88.5%(前年度85.9%)に対し、男性の育休取得率は7.5%(前年度5.4%)にとどまっています。男性の育休取得率は前年よりは上昇しているとはいえ、ノルウェーの90%(2012年時点)、スウェーデンの88.3%(2004年時点)と比べると、かなり低い数値です。(※2)


だからと言って、「日本の男性は育児に協力的でない」と一概に責めることはできないでしょう。育休を取得したいけれど会社の空気的に出来ない、子育てしたいけれど長時間労働が原因で物理的にできない、という男性も多いのです。


なぜ、日本はこのような状態にとどまっているのでしょうか? 本書では、「日本の性別分業役割規範の強さ」に一因があると指摘しています。


資本主義経済の発展のなかで、生産と消費が空間的に分離される過程で登場した「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業は、女性に、家事や育児・介護といった役割を割りあてると同時に、女性の生活空間を私的な家庭へと限定した。女性がケアを引き受けることは女性の特性からみて自然であるとされ、女性は、家族へのきめ細かい気配りやケアを通じて、家族への愛情を示すことが求められた。とくにケアを通じた他者への献身が、女性自身の存在証明の要である。ケアは社会的強制であると同時に、女性がケア役割に自分自身を縛りつけている側面も否めない。(P.238)


「男は仕事、女は家庭」という性別役割分業は、男性に大黒柱になることを要求するものでもあるため、いきおい長時間労働やハードワークを余儀なくされ、ますます家事・育児・介護から遠ざかることになる、というわけです。


また、明治民法も、ケアを女性の仕事化することにひと役買っている、とも指摘しています。


千八九九年に施行された明治民法は、家長である戸主(原則として男性)に強大な権限を与えると同時に、両親や祖父母などの尊属の扶養義務を貸した「家制度」を法的に支えてきた。「嫁入り」婚によって長男と結婚した女性は、夫の家族と同居することで、夫の両親の介護を引き受け、その後夫の介護も担うことが求められたのである。(P.239)


第二次世界大戦後、家制度は廃止されますが、「嫁による老親介護という私的扶養の慣習は長期にわたって維持されてきた」というのです。


イクメンだけでなく、介護メンも増えている

イクメン

男性が育児をする割合はほんの少しずつですが上昇していることは、先ほどの統計でご紹介した通りです。また、これまで女性の仕事とされていた家庭内の介護についても、男性の割合は増加傾向にあります。

平成28年の調査では、同居している主な介護者は女性が66%・男性が34%(介護時間がほとんど終日の場合は女性が72.5%・男性が27.5%)だとし、依然として女性に介護の負荷がかかりがちであることが明らかになっています。(※3)


ですが同時に、本書では、不平等是正の兆しがみられる下記のデータも示されています。


・1968年には介護者の49.8%が子の配偶者(つまり嫁か婿)だったが、2013年には12.8%と大幅に下がった。

・1968年には息子が介護者になる割合はたった2.7%だったが、2013年には14.2%になっている。(娘が介護者となる割合は2013年時点で15.6%)

・1977年には夫が妻の介護者となる割合はたった5.7%だったが、2013年には14.5%に上昇している。(妻が夫の介護者となる割合は2013年時点で26.1%)


つまり、ここ40年あまりで、男性の介護者の割合は増加してきているのです。これは「嫁が義両親の介護をする」という風習がついに廃れてきたことに一因がるようです。


さいごに

しいたけの中華麺

イクメンや男性の介護者が増加しているとはいえ、現状、育児や介護などのケア労働はまだまだ女性に負荷が偏っています。

北欧がワンオペ育児を脱することができたのは、「パパ・クォータ制」が導入されたことが大きいでしょう。「パパ・クォータ制」とは、育児休業期間のうち、男性しか取得できない期間を設けた制度のことです。この期間は男性が利用しない場合消滅し、休業期間が消滅する、という制度のため、この制度を導入したことで、北欧の育休取得率は大幅にアップしたのです。


個人的には、「女性が輝ける社会」を本気で日本政府が作りたいと思うなら、こういった制度の導入も検討し、ケア労働の女性への偏りを是正していただきたいと思います。


※1 厚生労働省 平成29年雇用均等基本調査

※2 独立行政法人労働政策研究・研修機構(JILPT)

※3 厚生労働省 国民生活基礎調査



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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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