マタハラ

そのマタハラは法律違反です!マタハラに関する法制度・法規定

  • 更新日:2019/05/28

前回は、マタハラのタイプとマタハラ被害の実態についてお話しました。どのような言動がマタハラに当たるのか、具体的にイメージできたのではないかと思います。

では、いろいろなマタハラ行為は、法律ではどのように規制されているのでしょうか?今回は、マタハラに関する法制度や法規定について解説したいと思います。


マタハラに関する法制度

マタハラに関する法制度

マタハラを理解するためには、その前提として、妊娠・出産、育児についての様々な権利や制度を理解する必要があります。

しかし、妊娠・出産、育児に関する法制度は、労働基準法(労基法) 、男女雇用機会均等法(均等法) 、育児・介護休業法(育介法) という3つの法律(施行規則や指針、通達を含む) にまたがって規定されているため、分かりにくい点があります。そのため、実際の事例でも、会社側がマタハラに関する権利や制度を知らずに、誤った対応をしているケースが少なくありません。

マタハラ被害を受ける女性側でも、どのようなマタハラが法律に違反するのか、権利や制度についての知識を持つことが重要といえます。

以下では、マタハラに関する様々な権利・法制度について、代表的なものを説明します。


①妊娠・出産に関する権利・法制度

女性労働者を保護するための妊娠・出産に関する権利・制度は、主に労基法と均等法に定められています。

代表的なものは、以下のとおりです。

・産前産後休業(労基法65条1項・2項)

 すべての女性労働者は、出産予定日の6週間前から、出産翌日から8週間は、産前産後休業を取得できます。

・軽易業務への転換(労基法65条3項)

 妊娠中の女性労働者は、軽易な業務へ転換するよう請求できます。

・労働時間の制限(労基法66条2項・3項)

 妊娠中の女性労働者は、時間外労働、休日労働、深夜労働をさせないよう請求できます。

・健康診査等の時間確保(均等法12条)

 事業主は、女性労働者が妊産婦のための保健指導又は健康診査を受診するために必要な時間を確保できるようにしなければなりません(妊娠23週までは4週間に1回、妊娠24週~35週までは2週間に1回、妊娠36週~出産までは1週間に1回) 。

・医師指導による必要な措置(均等法13条)

 妊娠中及び出産後の女性労働者が、健康診査等を受け、医師等から指導を受けた場合には、事業主は、その指導を守れるように、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置(妊娠中の時差通勤、時短勤務、休憩時間の延長、休憩回数の増加、作業の制限等) を講じなければなりません。

※権利・法制度が適用される要件がありますので、注意が必要です。


②育児に関する権利・法制度

育児中の労働者(男女問わず)を保護するための育児に関する権利・制度は、主に育介法に定められています。

代表的なものは、以下のとおりです。

・育児休業(育介法5条~9条)

 子1人につき1回、子の出生日から1歳の誕生日の前日までの連続した期間、事業主に申し出ることにより、育児休業を取得できます(保育所に入所できない等の事情がある場合には、子が1歳6か月になるまで延長可) 。

・子の看護休暇(育介法16条の2)

 小学校に就学するまでの子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより、子が1人の場合は年5日まで、2人以上の場合は年10日まで、病気・怪我をした子の監護のために休暇を取得できます(半日単位で取得可能) 。

・育児のための所定外労働の制限(育介法16条の8)

 3歳未満の子を養育する労働者は、原則として、1回の請求につき1月以上1年以内の期間、所定労働時間を超える労働をさせないよう請求できます。

・育児のための時間外労働の制限(育介法17条)

 小学校に就学するまでの子を養育する労働者は、原則として、1回の請求につき1月以上1年以内の期間、制限時間(1月24時間、1年150時間) を超えて時間外労働をさせないよう請求できます。

・育児のための深夜労働の制限(育介法19条)

 小学校に就学するまでの子を養育する労働者は、原則として、1回の請求につき1月以上6年以内の期間、午後10時から午前5時までの深夜労働をさせないよう請求できます。

・育児のための時短勤務(育介法23条1項)

 3歳未満の子を養育し、かつ、1日の所定労働時間が6時間以下でない労働者が勤務する場合、事業主は、その労働者が希望すれば利用できる時短勤務制度(1日の所定労働時間を原則として6時間とするものを含む) を設置しなければなりません。

・育児時間(労基法67条)

 生後1年未満の子を養育する女性労働者は、1日2回、それぞれ30分以上の育児時間を取得できます。

※権利・法制度が適用される要件がありますので、注意が必要です。


マタハラに関する法規定

マタハラに関する法規定

このように、妊娠・出産をした女性労働者、育児をしている労働者には、様々な権利や法制度が準備されています。そして、この労働者を保護するために、法規定も整備されています。

以下では、マタハラに関する法規定について、代表的なものを説明します。


①解雇制限

使用者は、産前産後休業中とその後30日間は、労働者を解雇することができません(労基法19条1項) 。

この期間内は、どのような理由があっても解雇することは許されないのです。


②妊娠・出産、育児休業等を理由とする不利益取扱いの禁止

時期を問わず、女性労働者の妊娠・出産を理由とし、また、産前産後休業等の権利を行使したこと等を理由とする解雇その他の不利益取扱いが禁止されています(均等法9条3項) 。

また、同様に、労働者(男女問わず) が育児休業等の申出・取得をしたことを理由とする解雇その他の不利益取扱いが禁止されています(育介法10条) 。

不利益取扱いと考えられる主な内容は、具体的には以下のとおりです。


・解雇する。

・有期労働者の契約を更新しない。

・有期労働者の更新回数を引き下げる。

・退職又は非正規社員への変更を強要する。

・降格させる。

・本人の意思と関係なく自宅待機させる。

・減給又は賞与に不利益な算定を行う。

・昇進、昇給の人事考課において不利益な評価を行う。

・不利益な配置転換をする。


③上司・同僚によるマタハラ言動の禁止

平成29年1月の均等法改正、育介法改正により、事業主に対してマタハラ防止措置を義務付ける規定が設けられました(均等法11条の2、育介法25条) 。

具体的には、妊娠・出産等に関する言動により、女性労働者の就業環境が害されないよう、事業主は、その女性労働者の相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備し、必要な措置を講じなければなりません。また、育児休業等の制度利用に関する言動により、労働者の就業環境が害されないよう、授業主は、その労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制を整備し、必要な措置を講じなければなりません。


この規定に基づいて作成された指針(マタハラ指針) は、マタハラには「制度等の利用への嫌がらせ型」 と「状態への嫌がらせ型」 があるとしています。

具体的には、「制度等の利用への嫌がらせ型」 としては、妊娠・出産、育児に関する権利・法制度の利用に関して、不利益取扱いを示唆する言動や、利用を妨げるような言動、利用したことによる嫌がらせをするものが当たります。

また、「状態への嫌がらせ型」 としては、女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、産後休業したこと、就業できなかったこと、つわり・妊娠悪阻・切迫流産・出産後の回復不全等、妊娠・出産に起因する症状により就業できなかったこと、労働能力が低下したこと等に関して、不利益取扱いを示唆する言動や、妊娠等をしたことにより嫌がらせをすることが当たります。

妊婦

このように、マタハラに関する権利・法制度には、妊娠・出産した女性労働者や、育児をしている労働者を保護するために、様々なものが用意されていますし、そのための法規定も整備されてきました。

しかし、実際には、なかなかマタハラ被害がなくならないのが現状です。法改正などもあり、マタハラに関する様々な制度や法規定について、会社側が十分に対応しきれていないことも、マタハラ被害がなくならない一因と考えられます。

でも、今回説明したマタハラに関する権利・法制度、法規定は、妊娠・出産、育児等をしている女性にとっては、どれも非常に重要なものです。今回のコラムをきっかけに、マタハラについての理解を深めていただき、生まれてくるお子さんや無事に生まれてすくすく育っているお子さんのためにも、働きやすい環境をみんなで作り上げていきたいですね。



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マタハラのタイプと被害の実態について弁護士に聞いてみた

セクハラに遭ったらどうすればいい?セクハラの対処方法を弁護士に聞いてみた

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パワハラ被害を訴えたい!弁護士ができること・依頼する時のポイントは?

パワハラに遭ったらどこに相談すればいいの?

弁護士に聞いてみた
  • 田中雅大 (弁護士/第二東京弁護士会所属)

    1975年生まれ。埼玉県出身。証券会社に勤務した後、2010年に弁護士登録。中小企業の法務や不動産案件を中心に扱いつつ離婚や不倫などに関する数々の男女トラブルを解決。趣味はサーフィン、草野球。

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