恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#77】好きだった頃が思い出せない?すれ違う彼に感じる虚しさ

  • 更新日:2019/05/07

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前回のあらすじ:幸太と別れたその日、夏美の足取りは軽やかだった。 これからは弘と向き合い、未来を見据えて暮らしていこう。そう思っているはずなのに、帰宅した夏美を待っていたのは、悲しいほどの現実だった。ダラダラと家のことをやらない弘。それに対して無償に苛立ち、不満を押さえ込みながら日常へと向かう自分。何が正解かわからない。わからないけど、ぐっと我慢してキッチンに立つと、背中から弘の無邪気な笑い声が聞こえてくるのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第77話:好きだった頃が思い出せない?すれ違う彼に感じる虚しさ

デートの約束ってどうやって決めていたんだっけ。

今日はどこへ行くか。どこで待ち合わせするのか。何を食べるか。1つ1つ手順をふんでいたはずなのに、年月を重ねた2人がやろうとすると、どうしてこんなに難しいのだろう。

第77話

「ねえ、週末どっか出かけない?」

「えー出かけるってどこへ?」

「んー新宿とか」

「なにしに?」

「映画とか」

「何観たいの?」

「えー今から探す…」


最近こんなやり取りばかりしている。はあと小さいため息をつくと、夏美はソファにもたれかかり、映画サイトを検索し始める。

せっかくの金曜の夜。ご飯に行こうといえば、時間が合えばねと流され、明日はデートに行こうと誘えば、内容を決めてよと促される。

付き合った頃は毎週末どこかにでかけていたはずが、あの時の約束や目的地は、どうやって決めていたんだろうか。思い出せない。思い出せないけど、確かにあの時は2人とも楽しいデートをしようと努力していた。だからこそ、今の温度差が夏美を一層しんどくさせる。


弘と向き合う。そう決めて毎日頑張ろうとしていたけれど、募る思いは弘への不満ばかりだ。

言わないと掃除もゴミ捨てもやらない弘。

食器を水につけ忘れる弘。

土日はゴロゴロしてばかりの弘。

結婚の話をあれから微塵も出さない弘。

つのる不満に目を向け始めると、見ないと決めていた借金の問題も、ちゃんと頑張っているのか気になってくる。

頑張って返すという言葉を信じたはずなのに。弘と向き合おうとするほど、彼のことが心配になってしまう。


「ねえ、じゃあこの映画はどう?最近凄い興行収入いいんだって」

夏美は映画の画面を弘の顔の前にだし、ヒラヒラと画面を動かしてみせる。

「もーそんな観たいの?じゃあチケット買っといてよ」

「なんか、乗り気じゃないなあ。いいの?」

「それでいいよ!」


“それでいい”じゃなくて、“それがいい”って言ってほしかった。夏美は思わず弘の言葉に反応し、胸のあたりに何かがつかえる感覚がある。

穏やかで怒りっぽくなくて、ぼんやりしているけど芯が強くて、責任感があって、時々仕事や私生活で行き詰った私を暖かく包み込んでくれる。そんなところが、弘の好きなところだった。

ネクタイを緩め、1週間の戦いを終えようとする彼には、物悲しさや哀愁しか感じられない。

あんなに好きだったはずなのに……。

そう思いながらチケット購入の画面に移る。観たいといった映画は、幸か不幸かラブストーリーだ。

「せめて映画を見て昔を思い出せたら」

その願いは、弘に向かっているのか、自分自身に向かっているのか、夏美でさえも分からないでいた。


NEXT ≫ 第78話:気づいたらすれ違う2人。埋まらない溝に気づいたときどうする?



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第72話:彼が好き?合わせてくれる彼だから好き?問われる本心


第73話:私、彼のことが本当に好き!言葉を上書きするように行動で自分を納得させる


第74話:「もう好きじゃない」本音を隠して別れ話を終わらせるためにすること


第75話:大人の別れ話は冷静に。そして果たされない約束で閉じられる


第76話:向き合い直した恋人を、もう一度ちゃんと好きになれるのか



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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