恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#75】大人の別れ話は冷静に。そして果たされない約束で閉じられる

  • 更新日:2019/05/01

≪ 先に前回を読む

前回のあらすじ:別れたいという話をLINEで送ると、幸太から会って話そうという連絡がきたため、夏美は重い空気の中、幸太と対峙する。 「幸太の事は好きだけど、彼氏とどうバランスを取っていったらいいのかずっと悩んでた」 「結婚式のとき以降、疲れちゃった」 もっともらしい理由をならべ、幸太に決断を迫る。決断というよりも、本当は飲み込んでもらうしか選択肢はないのだ。 理由に対してまだ納得しきらない幸太を見ていると、やっぱり私達はそんなに合ってなかったんだなという気持ちが湧きあがる。「もう好きじゃない?」と自分に問いかけると、心がシャンと整う気がする。自分の気持ちに忠実に。夏美は幸太にもう一度「別れたい」とハッキリと伝えるのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第75話:大人の別れ話は冷静に。そして果たされない約束で閉じられる

別れても友達として仲良し。

これは出来る人と出来ない人に分かれるけれど、出来ない側の人っていうのは、冷たい人なのだろうか。


「なんか夏美の気持ちがまだ良くわかんないけど、別れたいっていう気持ちは揺るがないんだよな」

幸太がゆっくり視線を上げながら、夏美に問いかける。

少しタレ目気味で、くっきりとした二重まぶたの幸太の目。それが笑うとクシャッと糸のように細くなる様が好きだった。だけど今は、じっとりとした視線に思わず夏美が耐えられず視線を外してしまう。


「別れたいと思ってる。ワガママで申し訳ないけど。あの子の一件があってから、なんていうか幸太のこと、あんまり前みたいな感覚で見られないの」

「そうか……うーん。そんなに嫌なことだとは、本当にわかんなかった。だけど、ダメなものはダメなんだよね?」

「……ごめん」

ダメと聞かれると、「ダメ」と答えるのには勇気がいる。夏美は少しでも柔らかい言葉を選びながら、自分がなるべく悪者にならないよう、言葉と理由を選んでいることにふと気づく。


『彼氏とどうバランスを取るべきか悩んでいた』

『結婚式の一件から、幸太のことを前みたいに見られない』

どちらも理由は本当だ。だけど、本当の理由は「幸太に冷めた」の一点のみなのだ。それを本人にあえて伝えないのは、自分の中の優しさではなく、ズルさなのだろう。

(まあでも、終わりになるならいっか)

そんな結論を頭の中で打ち出して、コーヒーをすすり時間が過ぎていくのを待つ。


「わかった。夏美が決めたんなら、仕方ないか」

幸太が向き直ってそう話す。

「俺、夏美とはどういう関係で続くかは分からなかったけど、でもなんていうか、凄く合うなって思ってた。だから別れるのは残念だし、引き止めたい気持ちもある。だけど、夏美が幸せになることが1番だから。応援するよ」

ニコリと笑った幸太と目が合う。細くなった目尻の先が少し震えている。

「ありがとう。分かってくれて…」

夏美も笑い返すと同時に、心の中で、小さくガッツポーズを決める。

でも本当は、幸太のこういうカッコつけてキレイに済ませようとするところに、心底嫌な気持ちになっていた。

言いたいことがあるなら言えばいいのに。納得できないことがあるなら言えばいいのに。そんなに残念って言うなら、全力で引き止めればいいのに。

別れたいと言ったくせに、夏美の頭の中には矛盾を含んだ言葉がフワフワと浮かんでは消えていく。

第75話

「じゃあ、また落ち着いたら飯でもいこう」

幸太の一言を合図にして、2人同時に席を立つ。

落ち着くっていうのはいつの事を指すのか分からない。でも幸太のこういう最後まで“かっこいい俺”でいようとする姿勢は、彼らしい。

「うん。じゃあまた」

キレイな嘘にキレイな嘘を重ね、2人は駅へと向かう。

夏美の足取りは、意識しないと跳ねてしまいそうになるほど、思いの外軽快だった。


NEXT ≫ 第76話:向き合い直した恋人を、もう一度ちゃんと好きになれるのか



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第70話:口に出すと現実味を帯びる心に芽生えていた感情


第71話:「なんで浮気したの?」自分も気づいていない隠された気持ち


第72話:彼が好き?合わせてくれる彼だから好き?問われる本心


第73話:私、彼のことが本当に好き!言葉を上書きするように行動で自分を納得させる


第74話:「もう好きじゃない」本音を隠して別れ話を終わらせるためにすること



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

この記事がいいと思ったら
いいね!しよう

Related関連記事

Pick Up編集部ピックアップ

Rankingランキング

#tag