恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#74】「もう好きじゃない」本音を隠して別れ話を終わらせるためにすること

  • 更新日:2019/05/01

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前回のあらすじ:『彼が好きなんじゃなくて、合わせてくれる彼が好き』 その指摘に、夏美は返す言葉が思いつかないでいた。すると時を同じくして、弘が帰宅する。 自分の動揺を悟られてはいけない。そんな気持ちから、いつも以上に元気に、そして手厚く彼を迎え入れると、何事もなかったかのような明るく幸せな空気が部屋を満たす。 「大丈夫。私は弘の事が確かに好きだ」 ご飯を準備し、声をかけ、彼の顔を観察する。自分の心に何度も大丈夫と言い聞かせながら、幸太と別れてこの幸せな日常に戻る決意を、ひっそりするのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第74話:「もう好きじゃない」本音を隠して別れ話を終わらせるためにすること

関係を始めるということは、いつか終わりがあるということだ。

でもその終わり方は、大体想像したものと違うのはなぜだろう。

第74話

目の前に見慣れた男が座っている。

コーヒーにミルクを注ぎながら、片手でスマホをいじっている。今から話す内容が分かっているからか、目線がどこか落ち着かない。


『別れたい』

夏美から幸太にLINEを送り、夏美の中ではこれでスッキリ終わりにするはずだった。でも幸太から「ちょっと待って、1回話し合おう」と返事が来たのは、少し意外だったかもしれない。

「話すことはないから……」と突っぱねられなかったのは、一度情を分かち合った弱さがそうさせるのか。そもそも別れたところで、関係性をすっぱり切る事ができないという側面が、なるべくキレイに事を収めようとしているのかもしれない。


「それでね、LINEでも話したけど、この関係は終わらせた方がいいと思うの」

夏美の方から本題を切り出すと、幸太は「どうしてそう思うの?」といつもの感じで返答する。

目線を合わせてこないところに、動揺の色が隠しきれない。

「私ね、幸太の事は好きだけど、彼氏とどうバランスを取っていったらいいのか、ずっと悩んでたの。その時ああいう事があって、なんか疲れちゃったんだよね」

「ああいう事って?」

「結婚式のことだよ。独占できる立場じゃないけど、やっぱり複雑っていうか、考えちゃう」


あえて“元セフレのこと”という言い方をしなかったが、幸太には伝わっているだろうか。一瞬考えながらコーヒーに口をつけると、思っていたよりも温度が低く、苦味が口いっぱいに広がる。ケーキを頼めばよかったと思うも、注文を避けたのはなるべく早くこの話を切り上げたかったからだという事を思い出す。


「え、あのこと、まだ気にしてたの?だってあれは本当に今はなんでもないって説明したじゃん」

「今は何でもない事はわかってるよ。そうじゃなくて、ああいう場に連れて来るっていうことに、感覚の違いがあるなーって思ったっていうか……」

「怒らせたなら謝るよ。でも俺的には、本当に昔のことだし、些細なことだから気づいてなかった。まじでごめん」

「ああ、うん……ありがとう。でも謝って欲しいわけじゃないから」

ぬるくなったコーヒーに無理矢理ミルクを足す。分離した白と黒をガチャガチャとかき混ぜていると、夏美は優越感と罪悪感に満ちている自分を認識する。

でも別れることを撤回したら、このコーヒーのミルクのように、色んな感覚もすぐに溶けて混ざり合って、分からなくなってしまうかもしれない。


(もう好きじゃない?)

自分の心に問いかけると、納得感のようなものを感じる。

(私は幸太を好きじゃない。)

確認すると、一瞬ブレかけた自分が戻ってくる。

そうだ、早く別れよう。

「ごめんね。やっぱそれでも、なんか疲れちゃったから別れたい」

コーヒーを口にすると、今度はぬるくてもまろやかな味が口に広がる。

幸太は苦々しい顔をしたまま返答しない。なんだかそれが滑稽ですらある。

夏美はもう一口コーヒーを飲み進め、沈黙の中で夕飯のメニューは何にしようか少し考えたりするのだった。


NEXT ≫ 第75話:大人の別れ話は冷静に。そして果たされない約束で閉じられる



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第69話:嫌悪していく心。それは一瞬のゆらめき?それとも本心なの?


第70話:口に出すと現実味を帯びる心に芽生えていた感情


第71話:「なんで浮気したの?」自分も気づいていない隠された気持ち


第72話:彼が好き?合わせてくれる彼だから好き?問われる本心


第73話:私、彼のことが本当に好き!言葉を上書きするように行動で自分を納得させる



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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