恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#73】私、彼のことが本当に好き!言葉を上書きするように行動で自分を納得させる

  • 更新日:2019/04/23

≪ 先に前回を読む

前回のあらすじ:浮気は不満だらけの弘へのあてつけだった。 そう指摘され、思わず顔が熱くなる夏美。確かに弘への不満は山程ある。それだけ弘にしっかりしてもらいたいという愛情だと思っていたし、今も思っている。 『あなたは彼のこと、本当に愛していましたか?実は自分の理想どおりの行動を取る彼が好きだったのではないですか』 チュベローズからの返信を目にし、夏美は硬直する。「私こんなワガママな女じゃない……」抵抗しようとするも、胃が締め付けられて身動きが取れない。気づいたら無意識のうちに、スマホの画面を消していた。それが精一杯の拒絶だと気づかないまま。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第73話:私、彼のことが本当に好き!言葉を上書きするように行動で自分を納得させる

彼の事が好き?

優しい彼が好き?

似ているようで意味は全く違う言葉。

そんな事、考える方が馬鹿げていると思いたい。


暗くなったスマホの画面をみながら、夏美は頭をポリポリ気まずそうにかくしかできない。

「彼が好きなんじゃなくて、合わせてくれる彼が好き……」

ポツリとつぶやくと、途端に未熟さが顔のあたりに熱を生み出す。

反応するということは、当たっているという事なのか。思わず頬に手を添えながら、深い溜息をつく。同時に玄関が音を立て、弘が帰ってくる。

動揺を隠すため、意識的に元気な声を出して玄関へと出迎える。

「ただいま…なに?どうしたの?」

靴紐を解く弘が、少しびっくりしながら、でも嬉しそうな顔で夏美を見上げる。それを見ていると、なんだか全ては夢の出来事だったのではないか。そんな気持ちになってくる。

「ううん、な〜んとなく。お腹空いてる?もうご飯にする?」


弘のカバンを持ち、リビングへと先に戻る。まるで貞淑な妻のようだなと思いながら、こんな事が自然とできる自分は、やっぱり弘の事を大事にしているんだ。という確認も忘れない。

キッチンに立ち、作っておいたスープに火を通し、下味をつけた豚肉を冷蔵庫から取り出す。ふと脇に、先日の結婚式の引き出物が置いてあるのに気づく。

好きでもないし、美味しくもないバームクーヘン。ただカロリーだけが高く、幸せな気持ちを味わうこともできない。

一瞬握りこぶしで潰してやりたい衝動に駆られ、「ふう…」とため息でエネルギーを逃がす。


料理は、頭の中をシンプルにしてくれるから好きだ。

そんなことを考えながら、肉をフライパンで焼き始める。

大丈夫。私は傷ついてない。

大丈夫。私の目的は幸太と別れることだ。

大丈夫。もう幸太には何を言うかは決まっている。

大丈夫。私は弘のことが確かに好きだ。


肉をひっくり返すたび、「大丈夫。大丈夫。大丈夫」と念仏のように自分に言い聞かせる。

幸太と別れて、弘をちゃんと好きになって、今まで通りの生活に戻ればいいんだ。ただそれだけだ。大丈夫。やることは決まっているし、私はできる。

こんがり焼けた豚肉をお皿に盛り付け、リビングへと運ぶ。

「あ、生姜焼きじゃん!」

部屋中に美味しい匂いが広がり、弘の明るい声が幸せな色を添える。

「うん。食べよー!」

第73話

椅子に腰掛け、手を合わせる。

これが日常だったんだ。幸せなんだ。好きなんだ。

対面する男の顔をチラリと見ながら、夏美は幸太に別れを告げる決意を一層強めるのだった。


NEXT ≫ 第74話:「もう好きじゃない」本音を隠して別れ話を終わらせるためにすること



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第68話:わかって!謝って!振り絞って伝えた気持ちに返ってきた答え


第69話:嫌悪していく心。それは一瞬のゆらめき?それとも本心なの?


第70話:口に出すと現実味を帯びる心に芽生えていた感情


第71話:「なんで浮気したの?」自分も気づいていない隠された気持ち


第72話:彼が好き?合わせてくれる彼だから好き?問われる本心



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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