恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#69】嫌悪していく心。それは一瞬のゆらめき?それとも本心なの?

  • 更新日:2019/04/09

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前回のあらすじ:夏美の怒りは、端的に言えば八つ当たりという奴だ。 それ自体はうっすら理解することができていたけれど、本当に幸太から欲しかったのは、分かってほしかったという感情と、悪かったという寄り添いなのだ。 しかし、夏美の希望に反して、彼は抱擁という力技でことを収めようとする。それだけでなく「夏美のことが1番好きだよ。だけどあんまり面倒な事は言わないでよ」と、温かくも冷たい一言が放たれる。 聞いた瞬間、驚きとあわせてお腹の中からゾワゾワとしたものが上り詰めてくる。それが嫌悪でありさらに深い感情が含まれていることに、今は気づいていなかった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第69:嫌悪していく心。それは一瞬のゆらめき?それとも本心なの?

人は思っている以上に、自分の本心に無頓着だ。

それは意識を向け忘れているのか、それとも見ないようにしているのかは、わからない。


私の言っていることって、面倒なの?

そもそも、私って1番じゃないのに、どうして明らかな嘘をつくの?

どうして自分が悪かったって、認めてくれないの?


幸太の腕に抱かれながら、頭の中をもの凄いスピードで不信感が駆け巡る。それと同時に、お腹から湧き上がる違和感が、夏美の背中、首筋、そして脳天まで立ち上る。

一瞬前に感じた安堵は、カタチをぐにゃりと変化させ、今にも離れたい気持ちでいっぱいになる。

なんか、嫌だ。嫌。嫌。嫌。

気持ちを悟られないよう、ゆっくりと幸太の腕から脱し、鼻先を見ながら言葉をかける。

「ごめんね、変なこと言って。聞いてくれて、ありがとう。ごめんね。帰ろう」

「うん……俺もごめんな…、よし!帰ろ」

言葉を発しているとき、自分はどんな顔をしていただろうか。歩き出しながら思考を巡らせる。自分でもわからないほど、深くハッキリと一線を引いてしまった気がして、それが顔に出ていなかったか。出ていてもこの人にはきっと読み取る力はないだろう。


早くこの場から去りたい。触れられたくない。この人の言葉を今は耳に入れたくない。幸太が他愛もない話をしているのが聞こえるが、聞いても聞いても、そばから溶けていき、頭に何も残らない。

駅まであと3分くらい。幸太は何線に乗るだろうか。私は銀座線だけど、かぶるようなら別の路線で帰ろう。途中でコンビニに寄ろう。読みそこねていた雑誌を立ち読みしよう。シュークリームを買おう。家に帰ったら今日は湯船につかろう。バスソルトがまだ一袋余っていたはずだ。

夏美はどうでもいい計画を入念に練ることで、今の状況から自分を少しだけ逃していく。


「じゃあ、また!打ち上げもあるだろうし、とりあえず連絡するよ」

「うん。わかった!おやすみなさい」

第69話

口角を上げて手を振り彼を見送る。姿が見えなくなっていくと、力が抜けてその場にへたりこんでしまう。

帰ろう。家に帰ろう。頑張った。私、よくやった。

うずくまって疲労感を感じながら、自分を鼓舞する。

鼓舞しなくちゃいけないほど、幸太に対して嫌悪していることには、まだハッキリと気づけていなかった。


NEXT ≫ 第70話:口に出すと現実味を帯びる心に芽生えていた感情



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第64話:「あれって彼女?」浮気相手への確認で知った真実とは


第65話:浮気相手の真実を知ったとき湧き上がる感情ととっさに取った行動


第66話:浮気相手の裏切り…!?問い詰めた先に返ってきた答えとは


第67話:ついに語られる真実!「シたけど違う!ってどういう意味?


第68話:わかって!謝って!振り絞って伝えた気持ちに返ってきた答え



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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