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【小説#32】30分遅刻して彼親と対面!謝罪の後に待っていた状況

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

≪ 先に前回を読む

前回のあらすじ:この後は、どうしたらいいんだろう。迷いながら電車に乗り込み、昨日の迷いやこれからどうするべきか、1時間の間に考えていた。 季子からのアドバイスで少しだけ冷静になると、借金が悪いという考えは、漠然とした怖さに対するものだったことが理解できた。弘への怒りは、不誠実さの方が大きかったということも、一応は気づけた。でも、それでも夏美はお腹の中がモヤモヤしていた。腑に落ちない。 そう思ったら、なおのこともう一度弘に会わなくちゃと思えてくる。とはいえ大遅刻。「どうにでもなれ!」新宿に降り立ち、夏美は自分を鼓舞するのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第32話:30分遅刻して彼親と対面!謝罪の後に待っていた状況

親に気に入られることは、いい結婚生活を送るための必須条件。

何かで読んだことがある。


ご両親に会うときは、フェミニンな格好に身をつつみ、手土産を忘れず、笑顔を絶やさず、明るく素朴に振る舞うべし。

と、雑誌で読んだことはあったのに、今日の夏美は、いい感じにそのすべてをクリアできていない状況にいた。


「遅くなって申し訳ありません。井田夏美と申します」


駅から少しだけ歩調を速め、若干の汗ばみ演出こそしたものの、30分の大遅刻は消せるものではない。

第32話

「申し訳ありません、ちょっと急な用事がありまして」


最低限の言い訳をして、後は深々と頭を下げて、精一杯の笑顔で対応する。


「はじめまして、弘の母です」

「父です。今ちょうど話しを聞いていたところだったんです」


小奇麗な格好をした男女が、夏美の着席を促してくる。おおらかな笑顔。第一印象はそんな感じだ。弘の顔は、どちらかと言えば父親譲りかな。


一瞬でいろんなことを頭の中に巡らせて、「すみません」ともう一度謝罪しつつ、着席する。遅刻の理由は、なんて伝えたのだろう。

弘と数日ぶりに目を合わせると、いつもと変わらない、ヘラヘラっとした暖かい微笑みが返ってくる。

その顔に、緊張がほぐれると同時に、どれだけこの数日間自分が悩んだのか、少しは心配そうにしてくれても…という、いつもの“癖”が出てしまったことに気づき、慌てて呼吸を整え、自分を取り戻す。


途中まで進んだコースに追いつきながら、和やかに会食は進んでいく。

どうして遅刻したのか。全く触れられないことが逆に違和感を覚えるくらい、穏やかに時間が過ぎていく。


― 普段2人はどんな感じなのか

― 弘はきちんと家事をしているのか

― 夏美の家族はどんな人物像なのか


想定の範囲内の質問に、夏美は模範解答で応じていく。その姿は、遅刻という減点をここで補填しなくてはという、夏美らしい保守に走っている気さえして、正直楽しいという気持ちは浮かんでいない。


しかし、この大遅刻に言及しないという平和すぎる状況が、やっぱりおかしかったのだ。

それは仕事の話に及んだとき、起きた。


「夏美さん、土日もこんな急に仕事が入るなんて、大丈夫なの?あなたの体もそうだけど、その、これから2人になったとき、仕事ばかりでは育つ仲も育たないんじゃないの?」


「え?」


一瞬、いや数秒間、夏美は混乱から「?」マークを何個も浮かべていた。

仕事…ああ、私は急な仕事に応じるために遅刻したことになっているんだ。

そう気づいたとき、同時に言葉の本意は、仕事の忙しさを心配するのではなく、遅刻について聞かずにはいられない本音であることを、見透かすこともできた。


「あ、そうですね、えっと…」


急な変化球の模範解答を色々探ると、言葉がどもる。畜生と叫びたい気持ちを抑さえながら、ガス入りの水をグイッと飲み干す。



NEXT ≫ 第33話:母親の小さな嫌味!模範回答を探していると、意外な彼からのアシストが



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第27話:明かされる彼氏の借金の理由!ただ聞きたかっただけ?それとも安心させてほしかっただけ?


第28話:自分の本音と今後に絶望!頼れるのはもう実家だけ


第29話:「ただ結婚して安心したかった」その事実に気づけただけで、実はいいこと?


第30話:借金よりも問題は隠し事!気づいたときに起きたこと


第31話:彼と会う前に気持ちの整理を…彼女が出した答え



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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