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【小説#26】微妙な温度から戻る二人の仲。そして彼が話した借金の真実

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

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前回のあらすじ:幸太から突然キスをされ、夏美の頭はパニックになっていた。「この後、どうする?」の問いに、夏美は思わずYESと返答してしまいそうになる。その時、弘からのメールが入り、現実に引き戻される。 「帰らなきゃ!」間一髪で誘惑に打ち勝ち、電車へと逃げ込む。何がどうしてどうなった……夏美はパニックを抑えるために、うなだれながら、ひたすら電車を降りた後のことを考えるだけだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第26話:微妙な温度から戻る二人の仲。そして彼が話した借金の真実

悪いことをしたなあと思う日は、いつもどちらともなくお菓子を買って帰る。それが最近できた、2人のマイルール。


コンビニに立ち寄り、なんとなくお菓子の棚を物色する。プリン、アイス、チョコにクッキー…。ふと新作アイスが目に入るけど、お腹が痛いんだったことを思い出し、手に取るのをやめる。フラフラと定まらない足取りで店内を二周し、呼吸と意識を弘へと向け直す。


さっきのは、何だったのだろうか。

吐く息とともに、脳裏を幸太との時間が蘇る。


「キス…されたんだよね」


ボソリとつぶやき、思わず他の客に聞かれていなかったかキョロキョロと確認し、ホッと胸をなでおろす。


第26話

一連の動作をしいる自分が滑稽に思えてきて、とりあえずトイレットペーパーを乱暴につかみ、もう片方の手でシュークリームを2つ掴み取ってレジへと向かう。

冷静さを保とうとする自分の顔を、中東方面出身と思われる店員さんが、なんとも言えない表情でのぞく。


冷静になれ。冷静になれ。


「た、ただいまー」


気持ち足取りを重くし、自宅に帰る。心配という気持ちもあるけど、顔を合わせて声をかわすことに、まだ怖さがあった。


リビングに戻ると、弘はソファに横になり、ゴロリとくつろぎテレビを観ている。いつもと変わらずに。


「はい、トイレットペーパー。お腹痛いんじゃないの?」


一瞬その姿にガックリとなってしまうが、トイレットペーパーの半分は、彼からの贖罪が含まれていることは夏美もわかってはいた。


「ありがとー。あーシュークリームあるじゃん。やったー」


弘が立ち上がり、トイレへと姿を消す。

一応、トイレットペーパーを欲していたのは本当だったらしい。いつもどおりに戻った空気に、小さく胸をなでおろす。


「そういえばさ、もう明後日だよね。何時からだっけ?」


トイレから戻った弘に、今度は夏美が話しかける。

日が変わり、明後日は待望か絶望か、弘の親との食事会だ。


「11時半から」


「わかった…」


せっかく仲直りできたんだから、あまり言葉を多く発してはいけない。自分にそう言い聞かせる。


「この前はさ、あのー…えっと、ごめん。お金のこと。あんな言い方になったのは、ごめんなさい」


夏美の心は、謝罪を述べつつも“冷静”とは言えなかった。ゆっくり言葉を吐き出せば、それだけでお腹の中で不安と怒りの残像のマグマが、ブクブクと沸き立つ感覚がある。強くそれを押さえ込みながら、彼のテリトリーへと足を踏み入れる。


「私は、お金を返せるかってことも不安だけど、そもそもどうして弘が、あんな大金を背負い込んでいるかが、不思議でならなかったの。その不可解が溶けないと、正直ご両親にも、どんな顔して会ったらいいのか、わからない」


「……」


弘は、夏美の話をだまって聞いている。機嫌が良いか悪いかは、判断できない。


「言いたくないなら、今は言わなくてもいいよ。だけど、明後日親とも会わせてくれるってことは、この先とか…その…」


「結婚」という言葉を使うか迷い、声が一気に小さくなる。


「私との未来を少しでも考えているなら、いずれはきちんとしてほしい。“きちんと”ってことは、説明してほしいってことだから」


少しだけ強気に出られるのは、多分幸太という保険がどこかにあるからだ。夏美は他の男を利用するほどの自分のしたたかさに、少し笑けてくる。


「お金はさ…」


“借金”ではなく“お金”と表現するのは、弘の小さなプライドなのかもしれない。そう思いながら、「うん…」と小さくうなずき耳を傾ける。


「起業したときに使ったの」


「……え?え?起業??してたの?」


思いもよらない単語に、夏美は思わず大きな声で反芻する。



NEXT ≫ 第27話:明かされる彼氏の借金の理由!ただ聞きたかっただけ?それとも安心させてほしかっただけ?



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第21話:借金のある男は問答無用でダメ男?問われて気づくお金への思い込み


第22話:ついに問い詰める借金の真相!そのとき彼が話したことは…


第23話:不意打ちにダウン寸前!彼ではない男との秘密の夜


第24話:握られた手、思わず急接近するデートの行方は…


第25話:キスの後の「この後どうする?」その時彼女の頭に浮かんだこと



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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