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【小説#21 最終回】ずるい男は最後までずるく、気づいた女だけが生まれ変わる

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

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前回のあらすじ:最悪のタイミングで妊娠を告げる遥。その告白に親友は暖かな包容で答え、最愛の男は「どうしたいのか」と問う。その一言から、遥には別れを決められないだろうという本音が垣間見え、心がスーッと覚めていく。そして下した決断は、「不倫女をやめたい」という、哲也への要求ではなく、自分の中の願望だった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:最終話:ずるい男は最後までずるく、気づいた女だけが生まれ変わる

暖かな日差しが差し込む中、カーテンと窓を勢い良くひらき、空気を入れ替えながら、部屋に積まれたダンボールをぐるりと見渡す。

少なくなった荷物をゴミ袋に投げ入れると、それだけで心が一層軽くなっていく。


「不倫女ではいたくない」


遥が出した結論は、哲也への要求ではなく、シンプルだけど心からの自分の願望だった。

1年半も交際していたのに、気づけば遥は賢い男のいい彼女でいるため、自分のしてほしいことを我慢してばかりいたし、それを哲也が見透かしていたのを、あの日のやり取りで確かに感じ、そしてこの先愛情を食い尽くされていく未来を感じた。


荷物整理を始めてすぐ、ピンポーンと呑気にインターホンが鳴る。

「はーい!」とドアを開けると、外には真紀と、そして正典が立っていた。


「引っ越しおめでとー!!」


照れ隠しなのかフォローなのか、2人は声をそろえておどけてみせる。


「ちょっとー、付き合ってるなら早めに教えてほしかったんだけど!」


「ディズニーの時は、まだ“未満”だったんだよ」


遥の冗談まじりの問いかけに、真紀はヘラヘラと弁解しながら部屋に上がり込む。正典は恐縮しながらも、女子の部屋という異空間に、キョロキョロと首をせわしなく動かしている。


あの日の夜、哲也は結局「不倫女でいたくない」という願望をどう叶えるか、確信めいたことは語ってくれなかった。


「ネズミーランドには行ってないし、俺の家族は終わってる。離婚はしたいけど、でも今すぐできるかは、子どももいるし約束できない」


哲也は最後まで哲也だった。

自分の噓を認めず、原因を自分以外に求め、そして「別れる」という決定打を打たない狡猾さを、最後まで貫きとおした。もちろん社交辞令でも「ごめん」という言葉は出てこなかった。

真紀は同席しながらイライラし続けていたようだが、遥には数10分前まで好きだったはずの男の、分かりやすい賢さと保身に、最後は笑いすらこみ上げていた。


「本当にあたし、あんたのこと心配したんだからね!!ホラ、見てよコレ」


真紀がわざとらしく睨みながら、遥の前にスマホを突き出す。

そこには以前に、真紀が強引に推し進めた『不倫・お悩みサロン〜チュベローズ〜』の文字がある。


「あー懐かしい!」


遥がおどけてみせると、「見てないのかよっ!」とのけぞりながら、真紀は別の画面をタップし渡す。

そこには『私の友人が不倫をやめてくれません。どうしたら良いでしょう?』と書かれたお悩み相談が長々と載せられていた。


「ちょっと何これ!?」


遥はスクロールさせながら、画面を食い入るように見る。

書き込みの内容から、友人というのが自分を指していることがわかり、顔が熱くなる。


『別れるという決断は、自分が下さないと上手く行きません』

『親友として変わらず近くで見守り続けることで、必ずご友人が気づく瞬間が訪れます』

『未知ならぬ恋は、ただ判断を小さく1つ間違えただけなのです。いつかその間違いを認められる勇気が、ご友人にも芽生えます』


丁寧で優しい口調のアドバイスが、相談の下に長文で書かれている。


「あんたのために、ここまでしてあげたんだからね!」


真紀が恩着せがましく強調する。

若干真紀の行動はアドバイス通りではなかった気もするが、最後まで近くにいてくれたからこそ、今日の爽やかな日があることを、遥は噛みしめる。


「ありがとう」


じんわり涙が浮かぶのをこらえ、少しの間、2人は目で会話する。

表からトラックが近づく音が聞こえ、遥はサイトの画面を閉じ、真紀にスマホを渡して玄関のドアを開ける。



『恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~』をご愛読頂きありがとう御座いました。次の連載もお楽しみに!




■恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~バックナンバー

第16話:不倫相手の噓!? 告げられた絶望の真実は…


第17話:ついに運命の話し合い!でも秘密がバレて思わぬ険悪な空気に


第18話:「わかってほしいのは辛いという気持ち」話し合いで男と女がすれ違う理由


第19話:不倫の喧嘩に親友が乱入!繰り出されるビンタに、修羅場はさらに熱を帯びる


第20話:ついに来た不倫の終わり!女が別れ話で取る最後の怒り行動



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  • おおしまりえ(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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