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【小説#6】思いつきのデートは地獄確定?

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

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前回のあらすじ:哲也への疑惑を確かめることのできない遥は、気分転換に合コンで知り合った正典とデートすることを決める。そんな事情を知らない正典は、楽しそうに待ち合わせ場所へと現れる。「好きな男を信じるために、好きじゃない男とデートする」矛盾する決意を胸に、遥は店へと歩きだす。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第6話 思いつきのデートは地獄確定?

渋谷の人混みをかきわけ、正典は今日いく店のことを熱心に説明している。

土佐料理を提供する一軒家居酒屋だというが、雰囲気重視にも料理や酒重視にも喜ばれるチョイスに、さすが代理店マンぽいなあと感心してしまう。

掘りごたつに足を伸ばし、緊張をほぐしながらビールで乾杯をする。


「まずカツオのお造りは超おすすめ!分厚くて、びっくりするよ」


「あともし日本酒いけるなら、カツオにはこれが合うんだ」

慣れた感じで正典がメニューを説明してくれる。前回の姿から、自分勝手にグイグイくるタイプかと思っていたけど、意外といい人なのかもしれない。

遥は久しぶりに感じる男女の駆け引きの心地よさが、女としての自信を取り戻させてくれるのを感じる。


哲也よりも、人当たりはよさそうだな。

でもアウトドア好きな感じは、哲也とはタイプが違うな。

料理をつつきながら、遥は酔いとともに自分勝手な品評会をしていく。正典のお酒のピッチも、だんだんと上がっていく。


「遥ちゃんって、本当美人だよね。俺モテないから、今日はほんっっっと嬉しいわ」

すでに日本酒へと切り替えていた正典は、顔を赤くしながら恋愛に対する不満を口にする。


「でも代理店って聞くと、凄くモテるイメージあるよ」


「いやいやー、モテるのは遊んでる奴だけ。俺は誠心誠意誠実そのものだっつーのさ」


そろそろ3合を空けようとしたあたりで、正典の言葉の選び方がおかしくなりだす。

「まあまあ、じゃあ今度は私が合コンセッティングするよ」

遥はやんわり彼の対象から自分が外れるよう仕向けるも、いい気分になった男は、急に足先で遥を弄び始める。


「合コンも嬉しいけどさ、俺は遥ちゃんが可愛いと思ってるんだよ」


つんつんつん


「えー…」


遥は一瞬で頬が引きつるのを感じる。ここで確信めいたリアクションは、逆に逃げ場をなくすと思い、気づかないフリをしながら脚をずらす。


「マジで!あ、俺今酔ってるけど、別にお酒のせいで言ってるわけじゃないから」


つんつん。ススーッ。


まただ。正典の足先が、遥の足の先と数回触れ、こんどは正典の足の甲と、遥の足首が一瞬絡み合う感覚があった。


「もー、酔っ払いすぎないでね!」

遥はすかさずチェイサーを飲もうとするが、グラスを持った手が汗でぐっしょり濡れていたのに驚く。

悪い奴ではないけど、このままではマズい。

一気に酔いが覚めていくのを感じ、どうやってこの場を切り上げようか、シミュレーションし始める。

店から駅までの間には、都内有数のホテル街を横切ることになる。面倒くさいことにならないようにしなくちゃ。正典への好感が一瞬にしてしぼみ切り、面倒臭さと恐怖心へと変化する。


そうだ、真紀に連絡しよう。思い立ってスマホを開くと、数分前に哲也からLINEが入っていたことに気づく。


“今日は渋谷支店の立ち寄りだった。今からそっち行ってもいい?”


“あたしも今渋谷で飲んでて…お願い、友達が酔っ払っちゃって。今送り出すから、一緒に帰らない?”


遥は反射的にSOSを送る。待ち合わせると言っても、この状況をどう処理したらいいものか。そんなことよりも、正典を正しく振り切る方が今は先決だ。


「そろそろ行かなきゃ。ちょうど友達が渋谷にいるから、一緒に帰ることになった」

遥はそう言ってお会計を呼び、2人の上着をハンガーから外す。


「もう帰っちゃうの?」


「ごめんね、友達が待ってるから」


この時間から友達と合流するのもおかしい話だが、もう強引に引き上げるしかない。

お会計をすませ店内を後にしたが、正典の足取りは怪しく、よろけたタイミングで遥の肩を抱き寄せようとする。


「ほら、ちゃんと歩かないと、危ないよ」

正典の手を払いながら、駅までの道を踏ん張りながら進む。


早く帰ろう。早く帰ろう。早く帰ろう。


心の中で反芻しながら、道玄坂を下っていく。なんとか駅の改札までたどり着いたところで、正典は遥の両手をぎゅっと握る。


「今日はありがとう!俺酔っちゃってるけど、送ってもらっちゃって情けないけど、遥ちゃんのしっかりさに助けられた!」


握った手は握手のつもりだったのか、正典は満足げに手を上下にブンブンと振っている。遥も駅までこられた安心感と、無邪気な酔いどれに、つい手を振り返す。

酔っ払っていたとはいえ、ちょっと心配しすぎたかもしれない。そんな反省に笑えてきたとき、遥の後ろから聞き覚えのある声がする。


「遥?」


しまった!

そう思ったときには、もう遥も後ろを振り返っていた。


「て、哲也…」

そこには、疑惑と困惑の表情をうかべた、彼の姿があった。


NEXT ≫ 第7話:やっかいな男同士のプライドと浮気の言い訳



■恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~バックナンバー

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間


第2話:「不倫やめて」女友達のおせっかいは聞き入れるべき?


第3話:4年彼氏ナシ女と不倫女子!どちらが幸せで充実した人生か


第4話:不倫は普通の恋愛と変わらない!罪悪感ないけど何か問題ある?


第5話:不倫の疑心暗鬼は、他の男で解消するもの


  • おおしまりえ(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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