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【小説#5】不倫の疑心暗鬼は、他の男で解消するもの

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

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前回のあらすじ:哲也に飛びつき、つかの間の安心感を味わい尽くす遥。そのまま愛を確かめ始める2人だが、ふと哲也のカバンから茶封筒が滑り落ちるのが見える。「あれは何?」気になった遥は、翌朝哲也の目を盗み中身を見てみると、あるはずのない遊園地のチケットが入っていた。一体誰といくつもりなの…遥の心は揺れ始める。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第5話 不倫の疑心暗鬼は、他の男で解消するもの

オーラというものがこの世にあるとするならば、この画面からはドス黒いものが出ているだろうな。

数日前に真紀から教えてもらった恋愛お悩みサイトを熟読しながら、遥はつい、自分とは違う、もっと悲壮感漂う現実を探し、安心を得ようとしていた。


『友達の夫を寝取ってしまい、バレそう』

『婚約中の彼氏がいるけどセックスレス。浮気をしたらその人のことを好きになってしまった』

『やっと好きな人ができたけど、その人は現在婚約中。どうしたらいいのか分からない』


救いようのない悩みには、同志たちからの返信と、管理人と名乗る女性の、丁寧で冷静なアドバイスが並ぶ。

あたしの状況を書いたら、ここにいる人達はなんて答えを出すだろうか。少し考えてみるけれど、彼女たちとは比べられないほど普通の不倫だから、きっと大した答えは出てこないだろう。

そう結論づけることで、安心感を無理やり呼び起こそうとする。


「あたしの恋愛は違う」と豪語して不倫をしてきたものの、数日前、哲也のカバンからネズミーランドのチケットを見つけてから、遥の心は揺れ、疑い始めていた。

彼が本当はあたしに嘘をつき、平穏無事に家庭生活をおこなっているのではないか。そう推測してみると、心臓の下のほうが痙攣し、吐き気を感じるほどの動揺が襲う。


「なにやってんだ、あたしは」

深呼吸をしながら、動揺を落ち着け、自分にだけ聞こえる声でつぶやく。数日前には、悦に浸っていたのに。完全に矛盾している。

その証拠に、遥は今、ある男を待っていた。


風がまだ冷たい3月。冬物を着込む人が多い中、その男はトレンチコートを軽やかに着こなし、遥の前に現れた。

「お疲れ様!待たせちゃった?」

少し息が上がっているのは、ここまで駆けてきたのだろう。時間ピッタリに到着しているのに急ぐなんて、それくらい楽しみというアピールなのか。

遥は微笑みと同時に思考を巡らせ、男の本意を見通そうとしてみる。


「あたしも今来たところ。正典くん、仕事早めに終われたんだね」


「遥ちゃんとのデートなら、急ぐに決まってるじゃん」

合コンで知り合った正典の印象は、正直最低だった。酔いにまかせて距離を一気に縮めてくる感じは、逃げ道を奪われる気がして、上手さと同時に恐怖すらあった。

セクハラまがいの賞賛にうんざりしていたはずなのに、今こうしてデートをしているのは、魔が差したからに他ならない。


哲也への信頼のほころび。

疑惑が膨らんだタイミングで、正典はまるで状況を読んでいたかのように、遥を食事に誘ってきた。

普通に断ればよかったのに、哲也以外の男を拒絶する自分が、今は滑稽に思えてならなかった。全部あの日の出来事のせいだ。


“ 遊園地、本当は誰と行くつもりだったの? "


その一言を放てば解決するのに。遥は何度も頭の中で反芻してみたけれど、「家族」という言葉が返ってきたとき、どう切り返し、どんな顔をしたらいいかわからないでいた。


好きな男を信じるために、好きじゃない男とデートする。

それもおかしい話だけど、これがあたしに今できる精一杯の“誠意”なのだ。

遥の複雑さを知らない正典は、ただただ楽しそうに、これから向かう店の魅力を熱弁しているのだった。




NEXT ≫ 第6話:思いつきのデートは地獄確定?




■恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~バックナンバー

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間


第2話:「不倫やめて」女友達のおせっかいは聞き入れるべき?


第3話:4年彼氏ナシ女と不倫女子!どちらが幸せで充実した人生か


第4話:不倫は普通の恋愛と変わらない!罪悪感ないけど何か問題ある?


第5話:不倫の疑心暗鬼は、他の男で解消するもの


  • おおしまりえ(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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