母と娘

【小説】ジユウな母とオクビョウな私 #46 恋する時間(16)

  • 更新日:2020/05/29

« 前回から読む

#46 恋する時間(16)

 太陽たちに会ったのは、次の土曜日だった。

〈こごみって今週帰る?〉

 グループLINEで訊かれ、

〈ごめん。この前、帰っちゃった。しばらくないかも〉

 つつみ隠さず真実を伝えると、

〈おーい、帰ったら言えよ!〉

 太陽が文句たらたらのメッセージをくれたけれど、その日は別用で遊んでいたらしい。

 なんだ。

 特に誘いもなかったし、私はやけに散らかったエスニック雑貨と昭和歌謡の店で、母カップルと弟カップルと飲み会をしていた。

 自宅のことだけれど。

 太陽たちとは、週半ばのそのやり取りのあと、金曜の飲み会の連絡を見たきりだったけれど、土曜の午前中になっていきなり、

〈こごみ~、今からそっち行くよ。ていうか、もう向かってるところ。太陽の運転で、うしろに奥平くん〉

 美香ちゃんからメッセージをもらってびびった。

 いや、そんな学生みたいなノリで遊びに来られても。

 べつに用はないから、いいのだけれど。

〈うそっ。急だよ〉

〈いないの?〉

〈いるけど〉

〈よかった、じゃあ、また連絡するね〉

 そう送ってきたきり、なんの音信もない。

 一体なにをするのかわからないまま、とりあえず部屋を出る準備だけしておくと、十一時を過ぎたころに、ふいにLINE電話の着信音が鳴った。

「もう着いたよ、今、寮の前」

 楽しそうな美香ちゃんの声に、

「なんて!」

 私が思わず答えると、向こうからどっと笑う声が聞こえた。

 太陽と奥平君だろう。

「出た、こごみの、なんて! いただきました」

「言ったね」

 だいたい、なんの話をしていたかわかる。

 さすが地元の同級生男子、昔のアホなノリのままなのだろう。

 ははは、と私は力なく笑い、じゃあ今おりて行く、と答えた。


(つづく)



NEXT »#47 恋する時間(17)


« 小説を1話から読む

■ジユウな母とオクビョウな私|バックナンバー

第41話:恋する時間(11)


第42話:恋する時間(12)


第43話:恋する時間(13)


第44話:恋する時間(14)


第45話:恋する時間(15)



  • 藤野千夜 (小説家)

    1962年2月生まれの魚座のB型。 2000年に『夏の約束』で芥川賞受賞。 著書に『ルート225』『君のいた日々』『時穴みみか』『すしそばてんぷら』『編集ども集まれ!』など。

この記事がいいと思ったら
いいね!しよう

Related関連記事

Pick Up編集部ピックアップ

Rankingランキング

#tag