恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#90】自分の幸せ、彼の幸せ、実は知らないことだらけ?

  • 更新日:2019/06/19

≪ 先に前回を読む

前回のあらすじ:ご飯を食べながらチュベローズからの返信を読む。その中で『彼に尽くしたのは、彼が望んだからなのか?彼の幸せとはなんだったのか?』という質問に、夏美は一瞬立ち止まる。 「弘の幸せって、一体なんだっけ?」 想像してみるけれど、のんびり暮らしたいとか、今の仕事を続けたいのかとか、そういう細かいことが1つも分からない。『パートナー関係を築くには、深い信頼と相手の幸せを願い、与える姿勢が必要』だからこそ彼に聞かなくてはいけないけど、幸せについて聞いたことはなかったかも……そう思ったら、急に自分の幸せすらも何だったのか分からなくなってくる。 一旦スマホを閉じ、夏美は弘と本音で話す決意をするのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第90話:自分の幸せ、彼の幸せ、実は知らないことだらけ?

例えば私の夢が、海外移住とかこれから国家資格を目指すとか、

ちょっと突飛なものだったとしたら、彼はそれでも私と結婚するのだろうか。


なにか胃袋に入れたい。夏美はソファからゆっくりと立ち上がり、ノロノロとキッチンに向かう。

考えるには糖質だ。冷凍庫にしまったチョコレートクッキーを思い出す。船の絵柄があしらわれた大衆的な味のするお菓子。何枚か手に取り、その場で封を開け口に頬張ると、咀嚼の動きと連動し、やっと止まっていた脳みそが動き出すような感覚が戻る。


自分の幸せも漠然としていたし、弘の幸せもよくわかっていなかった。

その事実は、これから訪れる結婚という次のステージを一層不安にさせた。例えば弘が結婚した後、めちゃくちゃ壮大な夢を抱いていたら、私は合わせてついて行く必要があるってことだ。

いや、別について行くかは自由だ。

でも、結婚したら途中で放棄するわけにはいかないし。

やっぱり支えるというのが妻の仕事なんじゃないだろうか。

結婚したら彼に尽くし続け、幸せを築き続けなくてはいけない。


「あれ、そこに私の幸せはある、かな?」

夏美は自分の中の結婚についての“ねばならない”をさらいながら、ふとザラリとした違和感を覚える。

「そもそも私の幸せって、本当に結婚だけなんだっけ?」

そう言えば私の夢ってなんだったっけ。卒業アルバムにはなんて書いたか。大学や就職のときは何を思っていたか。

過ぎた時間をなぞりながら、お姫様、花屋、洋服屋さん、大手企業。商品企画……お嫁さん。

生まれてから今まで描いた夢や目標を1つずつ思い出す。

第90話

「そうだ、私お嫁さんになりたかったんだ!」

それは1つの回答のような、全くもって明快ではないような答えだった。

でも……。

夏美は新卒で就職し、企業に属し、夢に見た商品企画……とはいかないが、メーカーの販促業務に従事していたい。それ自体は面倒ながらもそれなりにやりがいもあるし、居心地も中堅社員となった今は非常に良かった。

出世したいとか大ヒットを生み出したいといった野心はないが、この会社には結婚しても子どもを産んでも、居続けるだろうな。

そんな漠然とした思い込みがあった。

別に辞めろと言われたら退職はいつだってできる。でも、相手のタイミングで今辞めることは、なにか大きなプロジェクトの途中というわけでもないが、凄く、引っかかるものがあった。

『お嫁さんになる』という夢と引き換えでも、なんだか自分の生活を大きく変えることに、納得がいっていない自分がそこにいた。


「1回弘の夢とか、将来についても聞いてみなきゃいけないね」

ふう、と少し見えた光に安堵する。

そして私の気持ちも、1回話してみなくちゃいけない。時計をみると、もうじき彼が帰ってくる時刻になっていた。


NEXT ≫ 第91話:「ねえ、夢ってなに?」本音で彼に問いかけると意外な答えが…



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第85話:彼からの急なご飯の誘い、伝えられたのは想像とは違う現実


第86話:待ちわびたプロポーズに、反射的に答えられない心理とは…


第87話:「結婚することになった…でも」感じる不安はマリッジブルー?


第88話:プロポーズは嬉しいのに…日に日に不安が募る女の本心


第89話:聞かれて頭が真っ白に…「彼が望む幸せ」ってどこまで知ってる?



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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