恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#87】「結婚することになった…でも」感じる不安はマリッジブルー?

  • 更新日:2019/06/11

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前回のあらすじ:北京への転勤が決まった弘。夏美は「私も行く」と言えず、当たり障りのない質問ばかりをしてしまう。不安もあるし、嬉しさもある。 『弘と結婚して、幸せになるんだ』 心の中でそう反すうすると、心臓がバクバクしてくる。幸せなはずなのに、不安なのだ。 あんなに憧れていたゴールが、今は先延ばしにしたい気持ちが強くなっているなんて……自分の変化にも驚くが、結局弘の少し切なそうな、恥ずかしそうな表情を前にし「行くに決まってるじゃん!凄く嬉しいよ!」と勢いで答えてしまう。 これはマリッジブルーなんだ。自分にそう言い聞かせ、不安を無理やり消そうとするのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第87話:「結婚することになった…でも」感じる不安はマリッジブルー?

恋愛は当人同士の関係性。

結婚は家と家の関係性。

そう聞くけれど、じゃあ家を喜ばせるために結婚するのも、1つの役目としては正しいことなのだろうか。

第87話

「あら、やっと!良かったじゃない!おめでとう」

受話器越しに、母親のワントーン高い声が聞こえてくる。

結婚を報告すると、母は予想よりも少しテンション高く、祝福してくれた。

“やっと”という言葉が引っかかるものの、喜んでくれるのなら良かったではないか。

安心させられて良かった。良かった。

心の中で反すうすると、少しだけ安堵の気持ちが広がる。


数ヶ月後には、自分が日本にいないという実感がないものの、いろいろ準備はしなくちゃいけない。まずは両家に挨拶に行き、仕事をやめて新居にあわせて荷物を整理する。クレジットカードや銀行口座、携帯も確認しておかなくてはいけないんだろうな。

そもそも北京という場所を、1回見に行かなくちゃいけない。

タスクを書き出すと、当然ながら多すぎて気が滅入る。


あれからガイドブックを買ってみたけれど、書いていることは大体がキラキラとした都会的な情報か、3,000年の歴史と言わんばかりの観光地ばかりだ。

住まう場所は北京の中心部から少し離れたところ。そのため、キラキラしたチャイナタウンという感じはないらしい。

『中国に住むポイント』的な情報を調べると、PM2.5が凄いからマスクを忘れずにとか、空気清浄機は良いものを買った方がいいとか、農薬除去にホタテパウダーは必須とか、無駄に不安にさせる情報も多い。

関東からほとんど出たことがないだけでなく、海外旅行すら積極的に行く方ではない夏美にとって、日に日に婚約が不安なものになっていた。

それが海外生活への不安だけならいいのだが、内訳にはそれ以外の気持ちの部分も多分にあるのが、日に日に理解できた。

結婚がしたかった夏美にとって、結婚ができる状況はもう手に入ってしまったゴールなのだ。そして次に欲しているのは、自分の理想的な結婚生活。そこには北京なんていらないし、本音をいえば、借金もセックスレスもいらない。


「お母さん、私けっこー不安なんだけど、どうしよう」

受話器越しに喜ぶ母に、夏美はポロリと弱音を吐き出してしまう。母親に悪いな……という気持ちが横切るが、先に言葉が出てしまった。

「そうなの?マリッジブルーかしら?弘くんにはちゃんと伝えた?海外は確かに不安だと思うけど、結婚するってそういうことなんだから」

“そういうこと”の意味がよく分からないが、母はきっと「頑張って合わせていくこと」とでも言いたいのだろうか。


深刻さが伝わらないような気がして、「ごめん、ありがとう。頑張る」と、簡単に済ませて電話を切る。

頭の中がごちゃごちゃしているけれど、落ち着こう。

深呼吸をしてソファに深く座ると、まるで自分が世界でひとりぼっちなような、不思議な不安感に包まれていく気がした。


NEXT ≫ 第88話:プロポーズは嬉しいのに…日に日に不安が募る女の本心



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第82話:その愛は押し付け?本当に彼のこと愛してる?と聞かれて迷う心


第83話:私は彼が大好き。だから結婚して幸せになりたい!の裏にあった本音


第84話:「結婚して幸せになりたい」気づいてしまった事実に、どう答えをだしたらいいのか


第85話:彼からの急なご飯の誘い、伝えられたのは想像とは違う現実


第86話:待ちわびたプロポーズに、反射的に答えられない心理とは…



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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