恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#86】待ちわびたプロポーズに、反射的に答えられない心理とは…

  • 更新日:2019/06/07

≪ 先に前回を読む

前回のあらすじ:ぎこちなく始まった焼き肉は、夏美の頭の中によくない想像ばかりを生み出していた。 別れたいとか言われるのかな。これからの2人のこととか話されるのかな。そんなことを考えていると、弘が真剣な眼差しで話し出す。 「あのさ、今日は伝えておきたいことがあったんだよ」 のんびり屋の弘がこんな真剣な顔つきになるなんて…そう思ったら、夏美の体は緊張でうまく対応できなくなる。 「実は、転勤になった。それが中国なんだ」 予想外の告白に、夏美は驚きと同時に「だから別れたいのかな…」という悪い想像をまたくっつけていた。 「だから、夏美もよかったらついて来ないかなと思って」 しかし、想像に反して、弘から放たれたのはいわゆる正式なプロポーズだった。 「え?私も???」 プロポーズに気づき答えるのに数秒かかる夏美。思わず出た反応は、「嬉しい」よりも「行きたくない!」という本音だった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第86話:待ちわびたプロポーズに、反射的に答えられない心理とは…

結婚に大事なのはタイミングである。

よく聞く言葉だけど、タイミングさえ合えばそれでいいのだろうか。


「中国…って、中国のどこ?」

「北京だよ」

「ぺきん…」

とっさに頭が浮かぶのは、北京ダッグとパンダだった。

これがヨーロッパとか、NYとかだったら、また気分も違うんだろうな……そんなことをつい考えてしまう自分がいた。


プロポーズって、もっとこうロマンチックな雰囲気の中で行われるはずだと思ってたけど、現実ってこんなもんなのかな。

でもやっと言ってくれてよかった。

けど北京って、中国語なんて全然分からないけどやっていけるのかな。

第86話

夏美は脳内で不満のような嬉しさのような思考を巡らせ、肉を口に含む。微妙に味がしない。歯で噛みちぎると、弾力のある何かをくちゃくちゃと砕いている感覚だけが伝わってくる。

私は弘と結婚して、幸せになれるんだ。

そう思ったら、途端に心臓がバクバクしてくる。あれ、幸せなはずなのに、不安だ。


「北京の転勤って、何するの?」

「うーんと、俺もまだ聞いてないけど、北京支社で営業じゃないかな」

「弘って中国語できたんだっけ?」

「いや、挨拶程度。だから勉強しないといけないんだよね」

「これってさ、やっぱり昇格ってヤツなの?凄いよね」

「昇格ではないんだけど、1回海外とか地方に行かせて、戻ってきて本社で重要なプロジェクトに突っ込まれることはよくあるから、いいチャンスだとは思うんだよね」

「ちなみに、給料とかも上がるの?」

「大して上がりはしないけど、物価も下がるし、住宅補助とかは出るから、生活面は安定してるよ」


だんだんと北京の話で盛り上がりをみせると、自然と胸のドキドキも収まってくる。

夏美もよかったらついて来ない?

という質問に、いの一番に「行く」と答えられなかった自分に、夏美自身は気づいていた。弘はどうだろう……チラッと顔をうかがうと、ビールを飲んで赤くなっている。ニコニコしているところをみると、“承諾したもの”として認識しているのかもしれない。

夏美自身は、承諾したような、してないような……あんなに憧れていたゴールだったものが、今は先延ばしにしたい気持ちの方が、強かった。


あっという間にお肉も野菜も食べ尽くし、そろそろという場面で、弘は「じゃあ、考えといて」とポツリと呟く。

その表情は、さっきの楽しそうな顔とは違い、少し切なさそうな、気まずそうな、恥ずかしそうに見える。

「い、行くに決まってるじゃん!何言ってるの?嬉しいよすごく」

そんな弘の顔を見たら、思わず言葉が口をつく。


「うん、ありがとう」

ふにゃっと笑い、目が細く切れてしまった弘を見ていると、夏美は自分の中の不安は、きっとマリッジブルー的なものなんだ。とりあえず、そう思うことにした。


NEXT ≫ 第87話:「結婚することになった…でも」感じる不安はマリッジブルー?



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第81話:「押し付けないで」彼氏からの本音に感じた衝撃


第82話:その愛は押し付け?本当に彼のこと愛してる?と聞かれて迷う心


第83話:私は彼が大好き。だから結婚して幸せになりたい!の裏にあった本音


第84話:「結婚して幸せになりたい」気づいてしまった事実に、どう答えをだしたらいいのか


第85話:彼からの急なご飯の誘い、伝えられたのは想像とは違う現実



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

この記事がいいと思ったら
いいね!しよう

Related関連記事

Pick Up編集部ピックアップ

Rankingランキング

#tag