恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~

【小説#85】彼からの急なご飯の誘い、伝えられたのは想像とは違う現実

  • 更新日:2019/06/04

≪ 先に前回を読む

前回のあらすじ:昨晩チュベローズから言われた一言が耳に残り、夏美は仕事も手につかずにいた。 『「結婚して幸せになりたい」のでしょうか。それとも「彼と幸せになりたい」のでしょうか。前者の場合、それは相手を愛しているとはいえません』 この一言が、意外にも自分の心にしっくり来ていることが、ショックでならないのだ。 今まで弘と結婚して、弘と幸せになりたいと思いこんでいたけれど、実はそうではないらしい。でも本当なのかな…そう思い、今度は幸太と結婚するイメージを浮かべ、次に好きでも嫌いでもない人達と、万が一自分が結婚したら…という想像を膨らませてみる。 すると、意外にもイメージのついてない人との想像は、ワクワクする気持ちもあり、自分の中に驚きと落胆が生まれる。 「私、本当にダメかも……」そう思っていると、弘から「今夜ご飯に行かないか」という誘いで、一瞬ドキリとするのだった。

恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第85話:彼からの急なご飯の誘い、伝えられたのは想像とは違う現実

焼き肉が好きだ。

肉が好きというのもあるけれど、なんとなく1つの鉄板を2人でつつき合う時間が幸せなのだ。


弘との会話はぎこちなく、このままじゃせっかくの食事が不味くなりそうだ。

まだ温まっていない鉄板を見つめながら、そんなことを考える。

昨晩の出来事について、どちらもイマイチ明言はしていない。お互い「きっと体調が悪かったんだ」とか「言い過ぎたから反省しているんだろうな」とか、気持ちを察し合っているのがわかる。

長く付き合った特権ともいえるが、果たして言葉で確認し合わず、相手の状態を察して理解した気になってしまうのは、良い事と言えるのだろうか。


酔っ払えば気持ちも緩むだろう。そんな思惑なのか、2人ともビールのピッチがいつもより早い。夏美は喉を苦味で潤しながら、これは自分が一旦は謝るべきか、一体なんで今日は誘ったのか、少し緩んだ理性で状況を精査する。


「あのさ……」

ジュウジュウとハラミが焼けてきた頃、中身のない会話が途切れ、弘が口を開く。

「なっ、ん?なに?」

少しだけ違う声色にドキリとすると、応答した言葉がつんのめってしまう。


「今日はちょっと伝えておきたいことがあったんだよ。昨日の今日でアレなんだけど、だから飯でもと思って」

「そうなんだ。あ、お肉、焼けてるよ」

とっさに緊張を隠そうと、肉を鉄板から拾い上げる。

次の1枚を焼くべきか一瞬迷い、空気の重たさにトングを手放す。

「話って、どんなこと?」

「うん。実は言いにくいんだけど……」


「言いにくいの」後に生み出される間が、とてつもなく長く感じ、箸を持つ手にぐっと力が入る。

「……転勤になった」

「え???」


沈黙を破った一言に、とっさに意味よりも間抜けな声が反応する。てっきり喧嘩のこととか、別れたいとか、2人の関係についての言葉が続くと思っていたからだ。

第85話

「転勤?え、うそ!?どこに?」

「それが、中国なんだ」

「中国?え!?海外?す…凄いじゃん」

とっさに今度は悪い想像が頭の中を駆け巡る。

海外転勤だから、これを機に別れよう。

海外転勤だから、一旦同棲を解消しよう。

心臓がバクバクする中、真剣な眼差しの弘と視線がピタリと合う。


「だから、夏美もよかったらついて来ないかなと思って」

「へー私も…え?私も???」


それが正式なプロポーズと気づくのに、数秒かかった。むしろ気づくまでの数秒のうちに、夏美の頭の中には、「中国とか怖い!行きたくない!」とか、瞬間的に後ろ向きな気持ちが浮かんでいたことに、自分自身も気づいていた。


NEXT ≫ 第86話:待ちわびたプロポーズに、反射的に答えられない心理とは…



■連載を1話から読む

第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから?



■恋愛パラドックス|バックナンバー

第80話:何もしてない彼氏に怒り!ぶつけた後に返ってきた思わぬ反応


第81話:「押し付けないで」彼氏からの本音に感じた衝撃


第82話:その愛は押し付け?本当に彼のこと愛してる?と聞かれて迷う心


第83話:私は彼が大好き。だから結婚して幸せになりたい!の裏にあった本音


第84話:「結婚して幸せになりたい」気づいてしまった事実に、どう答えをだしたらいいのか



▼前作の小説はコチラ!

第1話:行きたくない合コン!そこで待っていた地獄の時間



  • おおしまりえ (恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)

    水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。

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