
【小説#84】「結婚して幸せになりたい」気づいてしまった事実に、どう答えをだしたらいいのか
- 更新日:2019/06/04
- 公開日:2019/05/28
前回のあらすじ:「私は彼のことが大好きでした。だから家の事とか将来について、たくさん努力しました」
一気に感情を出し切ると、少しだけ気持ちが落ち着き、家路に着くことにする。
夏美のモチベーションは『結婚して、幸せになるんだ』という一点に集約されていた。結婚して幸せになりたい。だから家事も借金も乗り越える。そう思っていると、チュベローズから返信が来る。
『「結婚して幸せになりたい」のでしょうか。それとも「彼と幸せになりたい」のでしょうか。前者の場合、それは相手を愛しているとはいえません。』
その一文を読むと、足元グラグラと揺れるような感覚に陥る。
夏美は、本当に自分が望んでいるものに、気づいてしまったのだ。
心はいつだって正解を示す。 心が揺れるということは、それが本心。それが正解。 でも人は、理性がそれを拒絶すると、理性を正解と思い込もうとしてしまう。 「ああ、もう12時か…」 夏美がパッと時計を見上げると、長針と短針が重なろうとしていた。 今は会社で、さっきまで企画書を作っていて、これからお昼の時間だ。周囲の人たちは席を立ち外へ出かけていく。夏美は一瞬の静寂を感じ、深呼吸して少し現実を確認する。ぼんやりと薄れてしまった実体が、ゆっくりと戻ってくる気がする。 昨晩は1時過ぎに自宅には戻ってみたけれど、弘はなんにもなかったかのように眠っていたし、夏美はチュベローズからの返信に、正直混乱と衝撃を覚えていた。 『あなたの根本は、自分の幸せを考えて、必要なピースを選んでいるように思えてならないのです。「結婚して幸せになりたい」のでしょうか。それとも「彼と幸せになりたい」のでしょうか。前者の場合、それは相手を愛しているとはいえません』 チュベローズからの返信は、見た瞬間夏美の中で、何かがスッと入ってくる感覚があった。その感覚を例えるならば「腑に落ちる」というものなのだが、それを認めてしまっていいのか。夏美はその瞬間から今まで、ずっと動揺し、その事ばかり考えていた。 「私は結婚して幸せになりたい…弘と幸せになりたい…どっちなんだろう」 答えはなんとなく分かっていても、小さく声にだして空に聞いてみる。 ありきたりだが、弘との結婚式を脳裏に浮かべていると、一瞬不安は和らぎ、幸福感が湧く。ような気がする。 「でも、弘には借金があって、家事は私任せで、休日はデートもろくにしてくれないけど、幸せかな…」 あえて否定的な意見を想像にぶつけてみると、幸福感が波のように今度はサーッと引いてくる。ように感じる。 「じゃあ、幸太と結婚したら、幸せだった?」 今度はタキシードの相手を変えてみるけど、幸太のイメージはすぐに湧くが、あまり心は動かされない。そもそも幸太への気持ちは枯れてしまっているのだから、当然か…。と自分の謝った選択を振り返り、適当な人物を次々思い浮かべる。 「じゃあ営業の平田さんとか…」 「じゃあいつも会うカフェの店員さんとか…」 なるべく良いイメージも悪いイメージもついてない人との妄想を繰り返してみると、案外気分は悪くない。 むしろ相手が凄く優しかったり、凄くお金持ちだったりするかもしれない。そんなポジティブな要素が思い浮かび、ちょっとワクワクしている自分がいる。 しかし、ワクワクするってことは、弘と結婚したいのではなく「結婚して幸せになりたい」と自分が思っている事を裏付けることも分かっているので、夏美は困惑する。 「私、本当にダメかも…」 デスクで頭を抱えていると、おもむろにLINEが通知を知らせる。 ハッとして開くと、意外にも弘から「今夜ご飯に行かないか」という誘いだった。 別れるって言われるのかもしれない。 自分の気持ちを悟られたような気がして、夏美は一瞬ドキリとする。どちらにしろ、拒否権はないことは分かっているから、心拍数を上げながら一旦は承諾の返信をするのだった。 NEXT ≫ 第85話:彼からの急なご飯の誘い、伝えられたのは想像とは違う現実 第1話:とにかく結婚したい!家族の輪から取り残されるのは、私が独身だから? 第79話:デート中の些細な喧嘩!私は悪くないのに、どうしたらいいの? 第80話:何もしてない彼氏に怒り!ぶつけた後に返ってきた思わぬ反応 第82話:その愛は押し付け?本当に彼のこと愛してる?と聞かれて迷う心 第83話:私は彼が大好き。だから結婚して幸せになりたい!の裏にあった本音恋愛パラドックス ~しんどい女子の癒し方~:第84話:「結婚して幸せになりたい」気づいてしまった事実に、どう答えをだしたらいいのか
■連載を1話から読む
■恋愛パラドックス|バックナンバー
▼前作の小説はコチラ!
-
-
おおしまりえ
(恋愛ジャーナリスト/イラストレーター)
水商売やプロ雀士、一部上場企業などを渡り歩き、のべ1万人の男性を接客。鋭い観察眼を磨き、ゆりかごから墓場まで関わる男女問題を研究。本人も気づかない本音を見抜く力で、現在メディアや雑誌でコラムを執筆中。
この記事がいいと思ったら
いいね!しよう
Related関連記事
Pick Up編集部ピックアップ
Rankingランキング
-
1
エンタメ
「好き避け」しちゃう恋に未来はあるの!?好き避けする女性のホンネと恋愛成
-
2
エンタメ
カップルで貯める!「共同貯金」のコツ
-
3
エンタメ
80%以上が経験アリ!SNSでイラつく投稿TOP3
-
4
エンタメ
「残酷な天使のテーゼ」は若い男を天使に例え、成長しないでと願った歌
-
5
エンタメ
【ちょっとだけメンドクサイ女たち】第139話[最終回]
-
6
エンタメ
【ちょっとだけメンドクサイ女たち】第138話
-
7
エンタメ
ハーブティーが「うつ」の夫を支えてくれた 新刊『ハーブティーブレンド10
-
8
エンタメ
【ちょっとだけメンドクサイ女たち】第129話
-
9
エンタメ
「実は俺様なんです、ボク」人気ランキング3位・ベビーフェイスなイケメン・
-
10
エンタメ
離乳食レシピ:レタス(後期~完了期)ママもたのしいあかちゃんごはん#36