更年期

更年期以降、エストロゲンの不足が招く病気とは?

  • 更新日:2019/05/06

更年期に女性ホルモンのエストロゲンが減少すると、これまでのエストロゲンの恩恵に預かれなくなるのですから、さまざまな病気や症状が起こりやすくなります。更年期に起こる更年期障害はその代表です。更年期障害だけではありません。エストロゲンの分泌が減ることで、骨、血管、泌尿生殖器、脳の病気、生活習慣病にかかりやすいので注意が必要です。更年期から注意すべき病気について紹介します。知っておくことで予防ができます!


エストロゲンの減少は骨にも影響します!

骨

 まず、エストロゲンの分泌が減ることで注意したいのは、骨量の低下です。エストロゲンは、骨からカルシウムが減らないようにする働きがあります。

 そのため、更年期になってエストロゲンが減少すると、骨粗しょう症になりやすくなります。


 若いときに、無理なダイエットをして骨量が減っている人は、特に要注意です。


悪玉コレステロール、動脈硬化にも関係しています

悪玉コレステロール

 また、エストロゲンには、コレステロールの増加を抑えたり、動脈硬化をガードしたりする働きもあります。

 更年期前の女性が男性に比べて、生活習慣病になりにくいのは、エストロゲンのおかげだったのです。

 ですから、エストロゲンの分泌が減少することで、LDL(悪玉)コレステロールが増え、動脈硬化になりやすくなります。


 更年期以降にかかりやすい生活習慣病は、心臓系と血管系。エストロゲンには脂肪を燃やす働きがありますが、エストロゲンが減少する閉経後は、太りやすく、やせにくい状態になります。


 また、血圧が上がり、脂質異常症にもなりやすくなります。その結果、脳梗塞、脳溢血などの脳血管障害や狭心症、心筋梗塞などの心疾患を起こしやすくなるのです。


エストロゲンの減少がさまざまな病気を招く

病気

 このように、更年期になってエストロゲンの分泌が減少すると、エストロゲンの恩恵に預かれなくなります。エストロゲンのバリアが解けるため、さまざまな病気や症状が起こりやすくなるのです。子宮体がん、乳がんの発生率も急上昇します。


 この時期に起こる不調が更年期症状だと思って、我慢をしていたら、病気によるものだったと言うことがあります。


 不調を感じたら、まず婦人科を受診して、それが更年期によるものかどうかをきちんと確認することが大切です。同時に、骨粗しょう症や生活習慣病もチェックしてもらうとよいでしょう。


閉経後、こんな病気にご用心!

閉経後の病気

閉経してエストロゲンの分泌が減少することによって、起こりやすい症状や病気をあげます。今から予防できることもありますので、リスクを知って対策を立てましょう。


骨粗しょう症

 骨からカルシウムとたんぱく質が抜け、骨がスカスカになり折れやすくなる病気です。50歳前後の更年期から増え、60代後半では約半数の女性が骨粗しょう症だと言われています。エストロゲンには骨を維持する働きがあり、これが低下することで発症しやすくなるのです。予防にはカルシウム、ビタミンDの補給が大切。女性ホルモン補充療法(HRT)は骨粗しょう症予防に有効です。*1


子宮下垂、子宮脱

 子宮下垂は、子宮の位置が下がっていて腟の中にとどまっている状態。子宮脱は、子宮が腟の入り口から外へ出ている状態です。特に、閉経後エストロゲンの分泌が減少すると、子宮を支える骨盤底の筋肉が弾力を失い、緩んでしまうために起こりやすくなります。肛門や腟を引き締める骨盤底筋体操を行ない、予防しましょう。(※1)


萎縮性腟炎

 腟内に細菌が感染したり、腟粘膜が乾燥してひび割れたりして、炎症を起こします。閉経が近づき、エストロゲンが低下する40代後半から50代以降に増えてきます。腟粘膜が萎縮して薄くなり、腟内の自浄作用が低下するためです。外陰部の清潔に心がけ、治療はエストロゲン腟剤などを使います。*1


うつ症状

 エストロゲンが低下すると、脳の神経細胞の力も低下してしまうため、精神状態も不安定になります。閉経すると、不眠、脱力感、憂うつなどのうつ症状が増強されます。低下した女性ホルモンを補充するホルモン補充療法(HRT)でも改善できます。 (※1)


アルツハイマー型認知症

 閉経後に発症しやすい病気。エストロゲンに守られていた脳の力が低下するために生じやすくなります。この治療や予防にも女性ホルモン補充療法(HRT)は有効です。女性ホルモンには、アルツハイマー病で減少するアセチルコリンという脳内物質を増やす作用や、傷ついた神経細胞を修復する作用があります。(※1)


関節リウマチ、シェーグレン症候群

 いずれも自己免疫疾患のひとつで、膠原病の一種。40代以降の女性に発症することが多く、原因はわかっていませんが、更年期以降にかかることが多いため、ホルモンが関与しているのではと言われています。関節リウマチは関節に炎症が起き、関節がこわばり腫れて痛くなる病気。シェーグレン症候群はドライアイ、ドライマウスが起こり、鼻や腟などの粘膜も乾燥します。膠原病を専門とする内分泌内科などで治療をします。(※1)


糖尿病

 40歳以上で多くなる病気です。エストロゲンが低下すると、中性脂肪が増えやすくなります。中性脂肪が増えると糖尿病の要因にもなります。糖尿病の原因は、遺伝的体質、肥満、カロリー過多の食生活、運動不足、精神的ストレス。運動と食生活で肥満予防を心がけることは重要です。女性ホルモン補充療法(HRT)には、中性脂肪を増やさない作用があります。(※1)


腰痛

 更年期に骨を維持する働きをもつエストロゲンが減少することで、腰椎に負担がかかり、腰椎の軟骨が変化し、椎間板変性症などにかかりやすくなります。また、中性脂肪が増え、腰周りの筋肉が弱くなることも腰痛を起こす要因です。体重を減らし、骨や筋肉を鍛えることも大事。女性ホルモン補充療法(HRT)には、骨や筋肉を強くしたり、中性脂肪を抑えるなどの作用があります。(※1)


肩関節周囲炎(四十肩、五十肩)

 肩関節周囲の組織が変化して炎症を起こします。これもやはりエストロゲンの分泌の減少で、骨が弱くなってきたことにより起こることが多い症状です。急な痛みは安静にして、湿布薬や痛み止めで様子をみます。痛みが治まったら、ストレッチなどの運動を日ごろから心がけましょう。女性ホルモン補充療法(HRT)は予防に役立ちます。 (※1)


動脈硬化症

血液中のコレステロールや中性脂肪が血管の壁に付着して、血管が狭くなったりもろくなったりして血液が流れにくくなることで起こります。更年期以降は、エストロゲンの分泌が減少することで、コレステロールや中性脂肪が増えやすくなるので注意が必要。予防のために食生活に気をつけ、運動を心がけることが大切。女性ホルモン補充療法(HRT)は、中性脂肪、悪玉コレステロールを減らし、善玉コレステロールを増やすので、動脈硬化予防に有効です。(※1)


高血圧症

 更年期を迎えると、これまで正常血圧だった人も、高血圧になることが少なくなりません。ホルモンバランスが崩れることで、自律神経の働きが不安定になり、肥満やストレスなども原因となります。高血圧は動脈硬化の進行を早め、脳や心臓の循環障害も起こします。適度な運動と塩分に気をつけた食生活が大事です。できれば、生活習慣の見直しでコントロールします。どうしてもできない場合は、降圧剤で血圧をコントロールすることもあります。(※1)


脂質異常症

 血液中の脂質であるコレステロールや中性脂肪などが増加し、正常範囲を超えた状態を脂質異常症と言います。脂質異常症は放っておくと、動脈硬化、脳梗塞、脳出血、狭心症、心筋梗塞などの生命にかかわる重大な病気を起こします。エストロゲンが減少する更年期以降は、くれぐれも肥満にならないように要注意です。特に、動物性脂肪、糖質、アルコールの摂り過ぎ、運動不足には気をつけましょう。(※1)


脳梗塞・脳出血

 脳梗塞は、脳の動脈がつまって血液の循環障害を起こし、血管から酸素や栄養素が運ばれなくなることで、脳に障害が起こります。脳血栓と脳塞栓があります。脳出血は、脳の血管が破れて頭蓋内に出血し、脳内に血の塊ができる病気です。更年期になって、高血圧症、糖尿病、高脂血症、肥満、ストレスを起こすことが要因になることが多いので、これらの病気には十分気をつけましょう。これらの予防にも、女性ホルモン補充療法(HRT)は有効です。(※1)


狭心症・心筋梗塞

 動脈硬化症などによって、心臓に送られてくる血液量が極端に少なくなって、心臓の筋肉が酸素不足になって、発作的に胸の痛みを起こすのが狭心症です。心筋梗塞は、狭心症が進行して、心筋細胞が酸素不足になって壊死を起こした状態です。心臓に血液を起こる動脈硬化症の原因は、高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、肥満、過労などです。(※1)


乳がん

 乳がんの原因には、女性ホルモンのエストロゲンが深くかかわっていることが知られています。体内のエストロゲンが多いこと、また、体内にエストロゲンを加える経口避妊薬、閉経後のホルモン補充療法(HRT)は乳がんのリスクを高めます。また、初潮年齢が低い、閉経年齢が遅い、出産経験がない、初産年齢が遅い、授乳経験のないこと、飲酒、閉経後の肥満、身体活動度が低いことがリスクを高めます。そのほか、乳がんになった血縁者がいる(遺伝性、家族性乳がんの可能性)、良性乳腺疾患にかかったことがある、マンモグラフィで高濃度乳房であることがわかることも、乳がんの危険性を高めます。40歳から1年に1回の乳がん検診と、月1回の自己チェックが早期発見のポイントです。(※2)


子宮体がん

宮体がんは、エストロゲンの刺激が長期間続くことが原因で発生する場合と、エストロゲンとは関係ない原因で発生する場合があります。約8割は、エストロゲンの長期的な刺激と関係していると考えられています。エストロゲンが関係している子宮体がんには、肥満、閉経が遅い、出産経験がないなどの人に、リスクが高くなります。また、乳がんの治療でタモキシフェンという薬剤を使っていたり、ホルモン補充療法(HRT)も、子宮体がんのリスクになるとされています。40代から増え、50歳から60代の閉経前後が最も多いがんです。食生活の欧米化などに伴い増加しているとも言われています。(※2)


卵巣がん

近年、増加傾向にあり、40代から増加を始め、50歳代前半から60歳代前半でピークを迎え、その後は次第に減少します。卵巣がんの原因には、複数の要因が関係しているといわれています。また、卵巣がんの約10%は遺伝性によるものと考えられていて、BRCA1遺伝子あるいはBRCA2遺伝子変異が発症する危険性を高めることがわかっています。ほかには、排卵の回数が多いと卵巣がんになりやすいと考えられているため、妊娠や出産の経験がない人や、初経が早く閉経が遅い人は、発症するリスクが高くなる可能性があります。低用量ピルの使用は予防になると言われています。(※2)


ホルモン補充療法はメリット、デメリットを知って選んで

ホルモン補充療法

 ホルモン補充療法(HRT)などで、上手に女性ホルモン剤を使えばすれば、更年期に起こるつらい症状や病気は回避することができます。また、前述したような骨、血管、脳など、閉経後に起こるさまざまな病気の予防にもなります。

 しかし、一方で乳がん、子宮体がんのリスクが若干上がります。


 ホルモン補充療法(HRT)は、更年期女性の大きな味方になる治療ですが、メリット、デメリットをよく知って、選びましょう。


 更年期の不調は、無理したり、我慢したりせず、早いうちにケアすることが大事。もちろん、プレ更年期の時期から、運動や食事で、予防的対策をとることもおすすめです。喫煙、肥満などにも注意が必要です。


*1 『プレ更年期から始めよう』(かもがわ出版)より

*2 国立がん研究センターがん情報サービス より



▼バックナンバー

・更年期のはじまりのサインとは? 症状から見る“更年期指数チェック”


・更年期は本当につらい? 更年期って何かを知れば怖くない!


・老けるのは、女性ホルモンが低下するから!?


・女性ホルモンのエストロゲンの不足が不調を招いていた!?


・更年期障害ってならない人もいるの? 症状は日によって変わるって本当?


  • 増田 美加 (女性医療ジャーナリスト)

    女性誌や女性専門サイトで、女性の医療&健康・美容現場を取材&執筆。2006年に乳がんを経験。検診の啓発、更年期への対策、予防医学の視点より、健康で美しくイキイキと生きるためのエイジングケア講演を行う。

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