妊婦と子供

二人目ママさんにこそ知ってもらいたい母子感染って?

  • 更新日:2019/02/05

みなさんは、サイトメガロウイルス(CMVと略することもあります)というウイルス名を聞いたことがありますか?

2014年に神戸大産婦人科の山田教授らが行ったアンケート『胎児に影響を及ぼす感染症として知っていますか?』によると、HIV(エイズウイルス)や風疹ウイルスの認知度が75%を超えるのに対し、サイトメガロウイルスの認知度は一番低い18%という結果でした。

ですが、第1回でもお伝えしたように「認知度の低さ=頻度の低さ」ではありません。先天性サイトメガロウイルス感染症は、ダウン症と同じくらい頻度が高いのです。


今回は、感染や病気に敏感になりやすい妊婦さんでさえ知らないケースが多い、サイトメガロウイルスについて詳しく説明します。


サイトメガロウイルスって何?

サイトメガロウイルス

サイトメガロウイルスは世界中のいたるところにいる、ありふれたウイルスです。母乳・子どもの唾液や尿への接触・性行為などによって知らないうちに感染し、日本では成人の半数以上がすでに抗体(免疫)を持っています。

このように、小さな子どもでも大人でも、健康であれば感染しても全く問題ありません。


どんな人が感染すると危険なの?

『妊婦が初めて感染した場合』『妊婦の免疫力がひどく低下した場合』は胎児へ感染する可能性があります。


重症の場合、流産や死産することがあります。また妊婦健診で行われる超音波検査で、「胎盤や胎児の発達の異常」が観察されることがあります。

代表的な症状に、難聴(しばしば後発性または進行性)、精神運動発達遅滞、てんかん、視力障害、自閉症などがあります。

症状の詳しい説明はこちらをご覧ください。


どうやって感染するの?

感染ルート

画像提供:トーチの会


生まれてからの感染経路は、

・接触感染(尿、唾液)

・性行為感染(子宮頸管・粘液、腟分泌液、精液)

・母子感染(母乳、子宮頸管・膣分泌液)

・輸血・移植感染(血液、移植臓器)

など、様々な体液を介して起こります。


その中でも大きなウエイトを占めるのが接触感染です。 特に注意が必要なのは子どもの尿や唾液で、子どものおむつ替えや食事介助の時に、尿や唾液のついた手で目鼻口を触ると感染の可能性が高まります。

そこで、サイトメガロウイルスから赤ちゃんを守るための9つのポイントをまとめました。上に小さなお子さんがいる妊婦の方は特に意識してください。


○サイトメガロウイルスから赤ちゃんを守るための9か条

・石鹸と流水でしっかり手を洗う。

・おむつ交換、子どもの食事、鼻水やよだれの処理、おもちゃを触った後は念入りに手洗いする。

・食べ物、飲み物は子どもとは別にし、同じ箸やスプーン・フォークも使わないようにする。

・子どもにキスをするときは頬や唇へのキスは避けて、おでこにしてあげる。

・子どもの唾液やおしっこがついてしまったおもちゃや家具などはきれいにふき取る。

・このウイルスは石鹸、アルコール、漂白剤などに弱いため、手洗いや掃除の際はこうしたものが入った消毒薬や清掃用品を使う。

・このウイルスは乾燥に弱いため、敷物や布団類は天日で充分に乾燥させる。

・保育教諭など乳幼児と関わる職種の方は、妊娠したらできる限り年齢の高い子どもを担当するよう職場に依頼する。

・妊娠中の性行為の際には、コンドームを使う。


サイトメガロウイルスに関するよくある質問

Q&A

Q:サイトメガロウイルスは、加熱や冷凍処理で死滅しますか?

加熱の場合、72℃で5秒間、または63℃で30分間の加熱処理で99%以上のサイトメガロウイルスが死滅するとされていますので、一般的な過熱調理や熱湯消毒で問題ないといえます。

一方、冷凍では死滅しません。凍結と解凍を繰り返すとウイルスの感染性は低下すると言われていますが、完全に死滅できるわけではありません。


Q:子どもが湯船の中でおしっこをした場合、湯船のお湯から感染することはありますか?

サイトメガロウイルスは一般的に感染力の弱いウイルスです。お風呂の中に唾液や尿が入り込んだとしてもかなり希釈されますし、お湯の中ではウイルスも不安定で壊れやすくなるため、過度な心配は必要ありません。

ただ、度々湯船の中におしっこをしてしまうお子さんであれば、シャンプーや洗顔の際には湯船のお湯は使わず、蛇口から出したお湯を使うようにするとさらに確実ではあります。 湯船につかることや、湯船のお湯が跳ねて少し顔に飛んでくること、湯船の中のお湯で(頭や顔以外の)身体を洗うことに神経質になる必要はありません。

オムツを換えた後の手洗いや、子供の食べ残しを食べないなどの方がはるかに大切です。


動画でも予防方法がチェックできます!

子どもを病気や怪我から守りたい パパママのための子育て医療情報動画サイト「シルミルマモル」では、サイトメガロウイルスの予防方法を動画で分かりやすく説明しています。無音なので周囲を気にせずいつでもチェックできます。


■【動画】サイトメガロウイルスの予防


感染者への無意味な差別や偏見をなくそう

差別や偏見をなくそう

「先天性サイトメガロウイルス感染症の子どもやその母親には近づかないほうがいいですか?」と聞かれることがあります。

サイトメガロウイルスは世界中どこにでもいる普通のウイルスであり、感染しても症状が出ないから気付かないだけで、日本でも感染している人の方が多いくらいです。特に、健康な園児たちがこのウイルスを唾液や尿に排泄していることは、全然珍しいことではありません。

先天性サイトメガロウイルス感染症の子どもやその母親は、何も特別な存在ではありません。しかも、インフルエンザのように飛沫感染することはなく、唾液や尿に触れた手を介してしか感染しません。手洗いをきちんと行うことで予防できるので、感染者を差別したり隔離したりしても無意味で、何の効果もありません。

感染している子どもやその母親への差別・偏見は傷つけるだけです。絶対にやめましょう。


予防できるウイルスだから「正しく知ること」が大事

サイトメガロウイルス

妊娠中にサイトメガロウイルスに初感染する女性は、増えていくと予想されています。

日本でも昔だったら当たり前のように子どものうちにサイトメガロウイルスに感染していましたが、生活環境の改善に伴って感染しないまま大人になる人が増えました。つまり、未感染のまま妊娠可能年齢になる女性もそれだけ増え、妊娠中に初めて感染する可能性が増えてきたということです。


でもサイトメガロウイルスは、知っていればかなりの部分は予防が可能なウイルスです。そのために大事なのは「正しく知ること」。みんなで知って、みんなで予防する、それが今わたしたちにできることです。



▼バックナンバー

母子感染ってなに?今すぐ知ってほしいウイルスとは


妊婦が赤ちゃんを守るために心がけること三か条【トキソプラズマ】



医師監修

森内 浩幸(もりうち ひろゆき)

長崎大学大学病院 小児科、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 &熱帯医学・グローバルヘルス研究科 小児科学分野 教授 

http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/peditrcs/staff/staff_moriuchi.html


参照・引用・協力

・トーチの会HP


・Facebook


・Twitter


・Instagram


【実話】障害を持って生まれ16歳で亡くなった少女と愛犬の物語

・エリザベスと奇跡の犬ライリー(サウザンブックス)



  • 渡邊 智美 (歯科医師、先天性トキソプラズマ &サイトメガロウイルス感染症患者会「トーチの会」代表)

    2011年に先天性トキソプラズマ症の子を出産。NHK「トキソプラズマ特集」の取材協力をきっかけに啓発を始め2012年にトーチの会を設立。HPやSNSでの情報発信、講演や研修など啓発に力を入れている。

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