女性のカラダ

産みたいけど、今は産めない。「社会的不妊」を解決するには?

女性を幸せにする本

近年、「卵子は老化するから、女性は早く子供を産んでおくべき」「35歳を過ぎると高齢出産になるから、その前に第一子を産んでおいた方がいい」という論調をよく耳にします。少子化が急速に進んでいる現代の日本において、政治家や親世代が、20代、30代の女性たちにプレッシャーをかけたくなる気持ちは理解できます。


しかし、子供を産んでいない女性たちのなかには、「子供は欲しいけれど、今の状況では産めない。ちゃんと育てられる自信がない」と、子育てに責任を感じているからこそ及び腰になっている女性も多いのです。


「子供は欲しいけど、子供を産んだら、今の仕事は続けられないし……」「未婚で出産するのは、親から恥だと言われた。経済的にも育てる自信がない」など、出産後も仕事を続けるのが難しかったり、シングルマザーに対する社会的支援が薄かったりといった社会的理由で、子供を持つことを諦めている女性もたくさんいます。


こういった、「個人の事情や身体的な理由ではなく、教育や社会の構造などによって、女性たちが産みたいけど産めない状況に置かれていること」を、「社会的不妊」(※1)といいます。


今回は、「日本は社会的不妊を解決すべき」「少子化は社会の構造的な問題の結果であり、女性個人を責めても、また女性ばかりを見ていても、決して解消しない」と主張する社会学者の水無田気流さん著『「居場所」のない男、「時間」がない女』を参考に、社会的不妊の解決策について考えてみたいと思います。


子育て以前の問題。共働きが常識になっても家事を押し付けられる女性たち

現在、日本の子育ては、結婚し、共働きで育てていく形がスタンダードです。日本は男女の賃金格差が大きい国のひとつであるにも関わらず、シングルマザーへの支援は手厚いとは言い難いため、女性がひとりで子供を育てていくとなれば、貧困化はほとんど免れません。(※2)


では、夫婦ふたりでの子育てが問題ないかというと、そちらもいばらの道になることが珍しくありません。現代は、専業主婦家庭よりも共働き家庭の方が増えています。男性の年収が下がってきていること、女性の社会進出が進んでいることから、共働きをすることに異論のある人はあまりいないでしょう。問題は、共働きであったとしても、女性が家事分担を担う可能性が高いということです。


妻の従業上の地位別に妻の家事分担の分布を見てみると、「常勤」の場合、妻の分担割合は相対的に少なくなるが、それでも「100%」13.7%、「90~99%」30.0%、「80~89%」21.0%であり、常勤の妻の3分の2が家事の80%以上を担っていることがわかる。また、常勤でも妻が「100%」家事を担う世帯割合が約14%いるということは、共働きで妻もフルタイムで働いている世帯の夫の7人に1人は家事をまったくやっていないことを示している。(P,168)


著者は、女性が家事や仕事・育児でいつも時間に追われがちな現状を「日本女性の時間貧困」と名付けています。共働きで結婚したことによって夫の分の家事まで担うようになった女性が、この上子育ても引き受けるのは無理だと思うのは自然なことでしょう。

共働きの女性は、子供を産むことによって、家事・育児負担が増えてさらに時間に追われるようになるだけではなく、退職を余儀なくされたり、妊娠・出産を機に出世や昇級とは無縁の地位に追い込まれたりしてしまう可能性も多いにあるのです。


では、男性が家事・育児に協力的になれば良いのかというとそれだけでは解決しません。もちろん、共働きであるならば家事・育児の分担はするのは当たり前のことです。

ですが、これまでの男性の働き方は、「男性は会社にコミットして精一杯働く、家事は妻がする」というものでした。そのため、残業や出張続きで、プライベートの時間が取れないほどの激務に追われる男性も少なくないのです。男性がここまでがむしゃらに働かなければならなかったのは、そもそも「大黒柱」という重荷を男性ひとりで背負わされていたからなのです。


社会的不妊を解決するためには「女性の経済的基盤の安定」「家族規範の刷新」が必要

夫婦

「男は稼いで一家を養え」というプレッシャーから男性を解放しない限り、女性も「女性は家事・育児・介護など家の中の無償労働をするのは当たり前」という規範からは自由になることはできないでしょう。


女性も男性と同等の賃金と仕事の安定性を確保することができたなら、男性に対する「男は稼げないとだめ」という社会的プレッシャーが弱まると同時に、「家事・育児・介護は女性がするもの」というステレオタイプも薄れていくでしょう。また、女性がひとりで子育てすることになったとしても即貧困化するようなことはなくなるはずです。


筆者は、女性が社会的要因で出産・子育てを躊躇しないためには、以下のような条件が必要になってくると主張しています。


生物学的な妊娠・出産最適時期に、女性に子供を産むことを最優先させるつもりならば、①女性の経済的基盤の安定、②法律婚による夫婦からしか子供は産まれるべきではないという、旧態依然とした家族規範の刷新、以上2点が必要である。だが、現実的には女性の貧困も、保守的な家族観もまったく改まっていない。本気で少子化対策に力を入れるならば、究極的にはシングルマザーでも子供を産み育てやすい社会にならなければ、女性は自分の判断で子供を持つことが選択できない。(P.208)


産みたいけど産めない「社会的不妊」を撲滅するためには、育児や出産でも揺るがない女性の経済力の安定と、子育ての多様性への寛容さが求められると言えるでしょう。


さいごに。女性が産みたいときに産める社会をつくるためにできること

妊婦

「女性ひとりで子育てをする=貧困」になりがちな現代の日本では、女性が自分の意思だけで子供を産み育てることは難しいでしょう。


子供を産むことで女性は継続したキャリアが築き上げにくいというのは紛れもない現実です。結婚していても、何らかの理由で離婚・死別した場合、キャリアも失い、経済的に困窮しながら子育てしなければならないという現状が明白な社会では、子供を産むことに前向きになれないのも無理もないことです。


「今の日本では子供を産み育てることは考えられない」という現状は、ひとりの力だけでは変えることはできません。ただ、「私の力では何も変えられない」と諦めてしまったら、いつまでたっても、安心して子育てできる社会には近づけません。


今年(2018年)、妊娠・出産の順番を決める「妊娠順番制」とも呼べる制度を導入している職場があることがニュースになり、物議を醸しました。保育園などの慢性的な人手不足に悩まされている女性の多い職場の中には、「妊娠順番制」のような理不尽な制度が公然とまかり通っていた職場も少なからずあったようです。


この「妊娠順番制」は、この制度を理不尽に感じた人が、新聞に投書をしたことをきっかけにニュースになりました。


すぐに社会の制度を変えることはできませんが、声を挙げることで、「これはおかしい」「みんなで変えていこう」という空気を作ることはできます。女性が産みたいときに産むことができる社会をつくるためには、一人ひとりが、諦めずに声を挙げていく必要があるのでしょう。


さまざまな家族

『「居場所」のない男、「時間」がない女』では、様々なデータを用いて、「働き続けるしか人生の選択肢がなく、世界一孤独だとされる日本人男性」と「婚活・妊活・保活に追われ続け、家庭でも自分の時間を確保できない日本人女性」、双方が幸せになるためには何が必要か、が検証されています。婚活・妊活・家庭生活などにおいて、社会的な見地から考えてみたいという方はぜひご一読ください。


※1生殖工学博士の香川則子氏が任命


※2 平成28年度 全国ひとり親世帯等調査の結果 母子世帯の平均年間収入は243万円



今回ご紹介した本

『「居場所」のない男、「時間」がない女』

著者:水無田気流

出版社:日本経済新聞出版社




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  • 今来 今(フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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