
産婦人科医が言わない「男性側の不妊治療の基礎知識」とは?
- 更新日:2020/09/14
- 公開日:2020/09/14
不妊治療は体の構造上、どうしても女性側に精神的・肉体的な負担がかかりがちです。そのため、女性は積極的に情報収拾を行いますから、世の中には、女性側の不妊治療にまつわる知識があふれています。一方、男性側の不妊治療についての知識は、基本的なことですらあまり知られていないという現状があります。
今回は、不妊治療を検討されている男女に知っておいて欲しい、男性側の不妊治療の基礎知識についてご説明します。
初診の流れ。男性でも初診は婦人科の不妊外来で受けられる

できれば、初診から夫婦揃って婦人科を受診するのがよいでしょう。また、男性の場合は、泌尿器科でも受診が可能です。
初診の流れは病院によって若干異なることがありますが、大抵は以下の流れで行われると考えてよいでしょう。ここでは、『マンガでわかる!はじめての不妊治療―人工授精、体外受精もこわくない!』を参考に初診の流れをご紹介します。
初診の流れ1 問診票の記入
できるだけ具体的に記入します。
初診の流れ2 問診
女性の場合と同様、プライベートなことを色々聞かれる覚悟をしておいた方がよいでしょう。具体的には、健康状態・セックスの頻度・勃起や射精について、などを質問されます。
初診の流れ3 視診・触診
陰嚢や睾丸の大きさ・形・しこりの有無などを実際に触って確認されます。触診することで発育不全などの異常はある程度分かります。
初診の流れ4 血液検査・尿検査
血液や尿をとり、健康状態を調べます。また、ホルモン値や、抗精子抗体、染色体などを検査することもあります。
初診の流れ5 精液検査
男性の不妊原因の多くは精子のトラブルですから、精液検査は男性の不妊検査のメインとなる検査だと言えます。
男性の不妊検査の種類とは? 痛みを伴うものは少ない

男性の不妊検査は、女性ほど種類が多くはありません。また、女性と比べて肉体的苦痛を伴うものはほとんどありません。
基本的な検査は、以下の3つです。
・精液検査(マスターベーションで精液を採取し、精子の濃度や運動率を調べる検査)
・ホルモン検査(採血をしてホルモン値を調べ、ホルモン分泌や造精機能の異常を調べる検査)
・超音波検査(超音波をあて陰嚢内の状態を確認し、精索静脈瘤などの有無を調べる検査)
また、精密検査には、以下のような検査があります。
・精巣組織検査(陰嚢の皮膚を切開し精子がいるかを顕微鏡で調べる検査)
・抗精子抗体検査(精液を使い抗体の有無を調べる検査)
・染色体検査(採血し、染色体異常を調べる検査)
・精子精嚢造形検査(陰嚢を切開し、カテーテルを挿入しレントゲン撮影することで精管の詰まりを調べる検査)
・尿中精子検査(写生後の尿を採取し、逆行性射精の有無を調べる検査)
・精子尾部検査(採取した精液から、精子の尾部の異常の有無を調べる検査)
・ハムスターテスト(ハムスターの卵子を使用し、精子の受精能力の有無を調べる検査)
産婦人科医が言わない、男性側の不妊治療の基礎知識

精液検査の結果がふるわない場合は、超音波検査やホルモン検査を検討する必要があります。ただし、無精子症の場合には、生殖補助医療を専門とする泌尿器科医の専門分野となるため、通っている病院に専門医がいない場合は、他の施設を紹介してもらったり、探したりする必要があるのです。
出産ジャーナリストの河合蘭さんは、著書の中で「患者さんが、産婦人科医から、男性不妊の専門医にかかるようアドバイスされることは少ないようだ」と、産婦人科医から男性不妊の専門医を紹介されるケースは少ないという実情を明らかにしています。
考えてみれば当たり前のことですが、産婦人科医は基本的に女性を診察し治療するプロですが、男性の体を治療するプロではありません。
男性不妊の専門医はとても少ないという現状もあってか、産婦人科医から男性不妊の専門医にかかるように助言されることはあまりないということですから、「男性不妊を専門としている医師がいる」ということを基礎知識として知っておき、いざというときは自分で適切な医師を探せる状態にしておく必要があるでしょう。
さいごに
今回は、男性側の不妊治療の基礎知識をご紹介しました。
不妊治療は自分の意思で行うものです。信頼できる医師に出会えることは幸運なことですが、すべてを医師まかせにしてしまうのは危険です。基本的な知識を事前に学んでおくことで、安心して治療に専念することができるでしょう。
参考
・『不妊治療を考えたら読む本 科学でわかる「妊娠への近道」』(講談社)著者:浅田義正・河合蘭
・『最新版 赤ちゃんがほしいときに読む本』(ナツメ社)監修者:宮内彰人・笹井靖代
・『「ヒキタさん! ご懐妊ですよ」 男45歳・不妊治療はじめました』(光文社)著者:ヒキタクニオ
・『マンガでわかる!はじめての不妊治療―人工授精、体外受精もこわくない!』(主婦の友社)監修者:堤治
≫ 40歳までに知っておきたい、心と体のこと
・「妊娠のためのセックス」でセックスレスにならないために・男性が原因の不妊は約半数。精子の質は4ヶ月で改善できる?
・不妊治療の医療費控除は利用しなくちゃ損!お金が戻ってくるだけじゃない
・不妊治療に一般家庭はいくら払っている?助成金も活用しよう
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