
30代から増える子宮の3大病 ~子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症とは?
- 更新日:2020/11/08
- 公開日:2020/11/08
ひどい生理痛(月経困難症)の原因となる子宮の病気(器質性月経困難症)で多いのは、子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症の3つです。いずれも30代から多くなる病気です。これらは、将来の不妊症の原因にもなります。生理痛などの症状が、「以前よりひどくなってきた」「生理の出血量が多くなってきた」と感じたら、隠れた病気があるかもしれません。痛み止めなどの市販薬だけで対処せず、我慢しないで早めに婦人科を受診しましょう。
いつもと違う……を感じたら、婦人科へ

子宮の病気で良性のものは、子宮筋腫(しきゅうきんしゅ)、子宮内膜症(しきゅうないまくしょう)、子宮腺筋症(しきゅうせんきんしょう)が代表的な病気です。
腹部の痛みやひどい生理痛、生理以外の不正出血、普段と違うおりもの、下腹部のしこり、生理周期や量の異常などは、自分でチェックできる病気のサインです。
少しでも異常を感じたら、早めに婦人科を受診すれば、病気を軽いうちに治療することができます。
生理のある女性なら、日ごろから基礎体温表をつけておくと、異常の早期発見や診断にも役立ちます。
女性の子宮3大疾患とは?
子宮の病気には、子宮頸がんや子宮体がんなどの悪性のものもありますが、最も多いのは、子宮筋腫や子宮内膜症、子宮腺筋症です。
子宮の良性の3大病とは、どのようなものなのかをまとめました。
●子宮筋腫
30歳以上の女性の20~30%にみられます。悪性ではありませんが、貧血や痛みなどの原因になります。
子宮筋腫は、女性ホルモンで大きくなり、閉経すると逆に小さくなります。複数できることが多く、数や大きさはさまざまです。大きさやできる場所によって、症状が異なります。
できる場所は、子宮の内側(粘膜下筋腫)、子宮の筋肉の中(筋層内筋腫)、子宮の外側(漿膜下筋腫)です。
症状は、過多月経(生理時の出血の量が多い、血の塊があるなど)と生理痛です。ほかに生理以外の出血、腰痛、頻尿などもあります。不妊の原因にもなります。
小さくて、無症状の場合は、治療の必要はありません。症状がつらく、大きくなったり、貧血がひどければ、治療(薬や手術)します。
●子宮内膜症
子宮内膜がなんらかの原因で、本来あるべき子宮の内側以外の場所で発生し、発育する病気です。20~30代での発症が多く、ピークは30~34歳です。
子宮内膜が女性ホルモンの影響で生理周期に合わせて増殖して、生理時の血液が排出されず、周囲の組織と癒着を起こして、生理痛、腰痛、性交痛、排便痛などの痛みにつながります。
不妊症の原因にもなります。卵巣に起こるチョコレートのう胞も、子宮内膜症です。チョコレートのう胞は、40代を過ぎると一部、がん化するリスクが伴います。定期的に婦人科でチェックしていくことが大切です。
手術や薬物療法など治療の選択は、病態、年齢、妊娠・出産希望の有無によってさまざまです。自分の希望を医師に相談して、決めていくことが大事になります。
●子宮腺筋症
子宮内膜によく似た組織が、子宮の筋層内にできてしまう病気です。
子宮内膜症は、子宮以外の場所に内膜組織ができますが、子宮腺筋症では、子宮の筋層内に内膜組織ができます。そのため、子宮の壁が徐々に厚く、硬くなり、子宮が大きくなっていきます。
また、子宮腺筋症は、子宮筋腫とも似ています。筋腫はこぶができますが、腺筋症はこぶは見られず、子宮全体が大きく固くなっていきます。
子宮筋腫や子宮内膜症と合併することが多い病気です。ひどい生理痛、過多月経に悩まされます。
一般に生理痛は、子宮内膜症よりも強く、過多月経は子宮筋腫よりも重症です。息切れ、倦怠感などの貧血も、強く出る傾向にあります。
症状がひどい場合は、薬や手術で治療します。
過多月経の人は貧血に要注意!

過多月経(月経血の量が多い、血の塊があるなど)、頻発月経(月経周期が短い)の人は、貧血を起こしている可能性があります。
放置すると心臓に負担がかかり、ひどい場合は心不全につながるので要注意です。貧血を軽く見ず、決して放っておかないようにしましょう。症状がない人もいて、立ちくらみ、息切れなどに気づかないこともあります。
健康診断で貧血を指摘されたり、過多月経の人は、婦人科を受診してください。
子宮のおもな症状と疑われる病気リスト
子宮周りに起こるおもな症状と考えられる病気です。当てはまるものがあったら、早めに婦人科でチェックしましょう。
●生理(月経)異常
量が多くなり痛みが強い … 子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症
期間が長くなり量が多い … 子宮筋腫、子宮腺筋症、卵巣機能不全
生理痛 … 子宮筋腫、子宮内膜症、子宮腺筋症、月経困難症
●不正出血
不正出血 … 子宮筋腫、子宮頸がん、子宮腟部びらん、ポリープ、子宮頸管炎、子宮体がん、機能性子宮出血
閉経後の不正出血 … 子宮体がん、子宮頸がん、萎縮性腟炎、子宮肉腫、卵巣腫瘍、ポリープ
セックス後の出血 … 子宮腟部びらん、子宮頸がん、ポリープ
セックスと関係ない出血 … 子宮頸がん、子宮体がん、子宮筋腫、ポリープ、卵管がん
その他の不正出血 … 流産、子宮外妊娠、胞状奇胎(ほうじょうきたい)
●おりもの
色の変化や量の異常、かゆみ … トリコモナス腟炎、カンジダ腟炎、細菌性腟炎、萎縮性腟炎、子宮体がん、子宮頸がん
悪臭をともなう場合 … 進行した子宮頸がん、子宮体がん
●腹痛、腰痛
急激な痛み … 卵巣のう腫の茎捻転(けいねんてん)、卵巣のう腫の破裂、子宮外妊娠の破裂、卵巣出血
慢性的な痛み … 子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮がん、子宮肉腫、クラミジア感染症
発熱を伴う痛み … 骨盤腹膜炎、クラミジア感染症、子宮内膜炎、卵管炎
腹部のしこり … 子宮筋腫、卵巣腫瘍
外陰部の痛み … 外陰炎、性器ヘルペス、外陰がん
参考資料
『新版 知っておきたい子宮の病気』上坊敏子(新星出版社)
▼バックナンバー
・健康保険の漢方薬とドラッグストアの漢方薬、どう違う? 漢方薬の疑問に答えるQ&A
・漢方はオーダーメイドの医療。女性のための漢方を上手に使うために
・コロナ禍の今こそ、知っておきたい漢方。女性の不調や未病対策が得意です!
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増田 美加
(女性医療ジャーナリスト)
女性誌や女性専門サイトで、女性の医療&健康・美容現場を取材&執筆。2006年に乳がんを経験。検診の啓発、更年期への対策、予防医学の視点より、健康で美しくイキイキと生きるためのエイジングケア講演を行う。
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