
健康保険の漢方薬とドラッグストアの漢方薬、どう違う? 漢方薬の疑問に答えるQ&A
- 更新日:2020/10/25
- 公開日:2020/10/25
「クリニックで処方箋をもらう漢方薬とドラッグストアで売っている漢方薬でどう違うの?」「病院で医師が処方する保険が使える漢方薬と、漢方薬局などで自費で購入する漢方薬では、どう違うの?」などの疑問の声をよく聞きます。上手に利用するために、漢方薬についての疑問にお答えします。
クリニック以外では処方してもらえないの?

厚労省が承認した漢方薬は、クリニック(医療施設)で医師、薬剤師が処方する「医療用漢方薬(処方薬)」148処方と、ドラッグストアで市販している「一般用漢方薬(市販薬)」294処方があります。
医師が処方箋を書いて、漢方薬を処方する「医療用漢方薬」はクリニックなどの医療機関だけです。ドラッグストアでは、自分で購入する「一般用漢方薬」しかありません。
また、街の漢方薬局では、「医療用漢方薬」と「一般用漢方薬」両方を販売しているところがありますので、確認が必要です。街の漢方薬局は、自費の漢方薬です。健康保険は使えません。また、厚労省に承認された漢方薬ではなく、お茶やサプリメント、民間薬などとして販売されているものもありますので、見極めることが大切になります。
日本では、西洋医学の医師の約8割が普通の診療の中で、漢方薬を処方しています。これは日本だけで、中国や韓国では西洋医学の医師は、中薬(漢方薬)を処方しません。
クリニックの処方薬とドラッグストアの市販薬、どう違う?
クリニック(医療施設)の「医療用漢方薬(処方薬)」もドラッグストアの「一般用漢方薬(市販薬)」も、どちらも漢方薬に含まれる生薬の成分は、同じです。
しかし、「一般用漢方薬」は、安全性を考慮して、1日の服用量中の成分量が少ない場合があります。
148処方ある「医療用漢方薬」は、医師の診察を受け、自分の「証」(体質、タイプ)にあったものを健康保険で処方してもらえるのに対して、ドラッグストアなどで売られている「一般用漢方薬」は、自分で選び、自費で購入します(健康保険は使えません)。
ですから、自分の「証」に合っているかは不明です。そのためか、市販の「一般用漢方薬」のほうが、「医療用漢方薬」より、副作用の報告が多いという実態もあります。
保険適応とそうでない漢方薬の違いは?
漢方薬は、高いというイメージがありますが、医師の処方箋がある「医療用漢方薬」であれば、健康保険が使え、安価です。
エキス剤(顆粒)が中心ですが、煎じ薬でも健康保険が使えるものもあります。
ただし、医療機関によっては自由診療だけで行っているところがあり、そこでは保険は使えません。保険診療を行っている医療機関かは、事前に確認したほうがよいでしょう。漢方薬局で購入する漢方薬も、健康保険は使えません。
健康保険が使えない自由診療の医療機関で処方する漢方薬の場合、例えば「葛根湯」では、生薬の種類は同じでも、生薬の分量を医師のさじ加減で微妙に変えることができます。
信頼できる漢方専門医であれば、自分だけのオーダーメイドの漢方薬を処方してもらえるメリットもあります。
漢方専門医でも、健康保険で処方している医師も少なくありません。日本東洋医学会のホームページから漢方専門医は、探せます。
●漢方専門医の探し方
「一般社団法人日本東洋医学会」漢方専門医検索で全国の各診療科の専門医が検索できます。
飲み続けても効果が感じられないときは、どうすれば?
漢方薬は、西洋薬よりは圧倒的に少ないですが、薬ですので、血圧が上がったり、下痢をしたりなどの副作用もあります。
「証」に合っていれば、風邪などの急性期の症状なら数10分から数時間で、なんらかの体の変化を感じます。
1~2週間程度飲んでも、変化を感じないときには、医師に相談しましょう。薬を変えてもらうことも大切です。
慢性の病気や体質改善のために、長く飲む漢方薬もありますが、良くなったら止めるのは、薬の基本です。
風邪や頭痛、のどの痛みなどの急性の症状には、そのときだけ飲めばいい、漢方薬もたくさんあります。
生理の不調や更年期の味方となってくれそうな漢方薬は?

漢方薬は、生理周期による不調や更年期障害などの症状の強い味方です。
東洋医学(漢方薬)では、更年期症状は「血(けつ)」の異常を中心として、「気(き)・水(すい)」のバランスの乱れをともなって生じると考えます。
イライラ、頭痛、肩こりなどは、「気」の乱れ。不眠、疲労感、肌のくすみは、「血」の乱れ。めまい、冷え、むくみは、「水」の乱れと考えて、漢方薬が処方されます。
また、「気・血・水」に加えて、「虚(きょ)」と「実(じつ)」でも、その人の「証」を見極めて漢方薬が処方されます。
「虚証(きょしょう)」は、体力がなく胃腸が弱く、抵抗力がないタイプ。逆に、「実証(じっしょう)」は、気力があり、抵抗力が強いタイプ。
更年期の症状によく処方されている漢方薬は、やや「実証」で、のぼせ、めまい、下腹部痛がある人には、「桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)」。
「実証」でのぼせ、便秘などがある人には、「桃核承気湯(とうかくじょうきとう)」。
「虚証」でイライラ、不安、肩こり、不眠などには、「加味逍遥散(かみしょうようさん)」。
冷え症、めまい、手足のむくみのある、疲れやすい「虚証」タイプには、「当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)」などがよく処方されています。
新型コロナウイルス対策になる漢方薬は?
新型コロナ予防に効果のある漢方薬については現在、日本東洋医学会ほか7団体で臨床研究を行っています。結果が出るまでは、まだ時間がかかります。
昔のスペイン風邪のときに使われた「小柴胡湯(しょうさいことう)」+「葛根湯(かっこんとう)」、あるいは「柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)」などが良いのでは、とも言われているようです。
また、免疫力を高める意味で、不安が強く食欲不振の人は、「補中益気湯(ほちゅうえっきとう)」が使われています。
漢方薬も副作用のある薬です。服用時には医師、薬剤師に相談してください。
漢方薬の効果的な飲み方は?

漢方薬は、空腹時に飲むことで、より吸収しやすく、効果が上がります。
西洋薬は、胃を荒らすため食後に飲む薬が多いですが、漢方薬は胃薬の作用がある生姜、大棗、甘草が入っているものが多いので、胃への負担は少ないのです。
また、エキス剤(顆粒)は、少量のお湯で溶いて飲むと、吸収率を上げて、効果が高まると言われています。
「桔梗湯(ききょうとう)」を喉の痛みで使うときは、お湯に溶いて冷ましてうがいをするという使い方もあります。
▼バックナンバー
・漢方はオーダーメイドの医療。女性のための漢方を上手に使うために
・コロナ禍の今こそ、知っておきたい漢方。女性の不調や未病対策が得意です!
・お尻がかゆい!見えない場所だから不安……どんな病気?病院はどこに行けば?
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増田 美加
(女性医療ジャーナリスト)
女性誌や女性専門サイトで、女性の医療&健康・美容現場を取材&執筆。2006年に乳がんを経験。検診の啓発、更年期への対策、予防医学の視点より、健康で美しくイキイキと生きるためのエイジングケア講演を行う。
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