漢方

漢方はオーダーメイドの医療。女性のための漢方を上手に使うために

  • 更新日:2020/10/11

 「漢方の診察ってどんなことするの?」「同じ症状なのに、違う漢方薬が処方されるのは、なぜ?」漢方は興味があるけれど、よくわからないという声も耳にします。上手に使えば、女性の不調に役立つ漢方。自分だけのオーダーメイドと言ってもいい医療です。その役立て方をまとめました。


あの人の薬が、私に効かない「同病異治(どうびょういち)」ってなに?

温まる女性

 漢方(東洋医学)では、一人ひとりの「証(しょう)」(体質、タイプ)に合わせた治療を行います。そのため、同じ病気でも「証」が違えば、違う漢方薬が処方されます。


 たとえば、西洋医学では、風邪をひとくくりにして、おおむね同じ薬が処方されます。けれども、漢方では、風邪の引き始めには、「葛根湯(かっこんとう)」が処方される人もいれば、「桂枝湯(けいしとう)」が処方される人もいます。


 また、同じ風邪症状でも、体力が衰え、寝汗をかく人には、「桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)」。

 風邪に加えて、胃腸症状がある人には、「桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)」などが処方される場合もあります。


 あの人に「葛根湯」が効いたからといって、私に効くとは限らない。それが漢方の「同病異治(どうびょういち)」です。


●風邪でよく処方される漢方薬

風邪のひき始め(実証) 葛根湯 

風邪のひき始め(虚証) 桂枝湯

手足のしびれがある場合 黄耆桂枝五物湯(おうぎけいしごもつとう)

寝汗がある場合     桂枝加黄耆湯

関節痛がある場合    柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)

胃腸症状がある場合   桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)


異なる症状に、同じ薬「異病同治(いびょうどうち)」ってなに?

 もうひとつ漢方薬の特徴があります。それは、異なるさまざまな症状や病気に、同じ薬が処方されるという「異病同治(いびょうどうち)」です。


 たとえば、風邪の初期の実証(じっしょう)タイプの人に効く「葛根湯」は、風邪だけでなく、肩こり、腰痛、神経痛…と、さまざまな症状の改善にも処方されます。

 「葛根湯」の効能には、風邪、肩こり、腰痛、神経痛、頭痛、中耳炎、鼻炎、慢性副鼻腔炎、結膜炎、乳腺炎、湿疹、蕁麻疹があるのです。


 また、「抑肝散(よくかんさん)」は、子どもの夜泣きに使われますが、「虚証(きょしょう)」タイプの不眠症、神経症などのメンタル症状にも処方されます。

 最近では、アルツハイマー型認知症の徘徊や興奮などBPSD(認知症の行動・心理症状)を抑える薬としても、「抑肝散」は使われ始めています。


漢方専門医は、「証」をどう診察するの?

 漢方(東洋医学)では、「証」の見極めが大事です。日本の医師の8割は、漢方薬を処方しますが、なかでも漢方専門医なら「四診(ししん)」で「証」を診て、適切な漢方薬を処方してくれます。五感をすべて使って、診療するのが漢方治療です。


 漢方専門医の診療は、西洋医学の診察と異なる特徴があります。それが「四診」です。


 四診では、「聞診(ぶんしん)、望診(ぼうしん)、切診(せっしん)、問診(もんしん)」を行います。これらの診察で得た情報を組み合わせて、総合的に患者さんの「証」(体質、タイプ)を見極めます。


 漢方専門医は、この「証」に従って、漢方薬をどう使うか、鍼灸を組み合わせるかなどの治療方針を決めます。

 

 西洋医学は、血液、尿や画像検査などの数値やデータで病気を特定し、病気の治療を行います。しかし、漢方(東洋医学)では、同じ病気でも「証」によって処方が異なる(同病異治)など、「証」の見極めが重要です。


 「証」は、診察を受けた今の状態なので、治療を受けたり、季節や年齢、生活習慣が変わることで変化します。

ですから医師は、2回目以降の診察でも、四診を行って新たに「証」を見極め、同じ漢方薬を継続するか、変更するかを考えていきます。


 漢方(東洋医学)は、病気を診るのではなく、ひとりひとりの体と心を診る医療です。ですから、漢方薬だけではなく、漢方薬が効く体づくり、日常生活による「養生」を大切にします。


 暴飲暴食、偏食、冷たいものを摂りすぎることなども避け、胃腸がより良い状態で働くような食養生もアドバイスします。

 また、日常生活における休養、睡眠、運動などの養生生活も大切です。それが心身を“中庸”に近づけ、“気・血・水”のバランスを整えることにつながるのです。


漢方(東洋医学)の診察法は?

診察

 漢方専門医が行う「四診(ししん)」の方法を紹介しましょう。


●漢方の診察法「四診」

① 聞診(ぶんしん)

声や呼吸、咳の音を聞いて、患者さんの状態を把握する診察。たとえば、声がかすれて、途切れがちだと、「気」が不足していると考えます。

 また、聞診の「聞」には、体から発するにおいをかぐという意味もあります。体臭や口臭も、体の状態を反映しています。たとえば、口臭が強いと、胃や口の中の変調を疑います。


② 望診(ぼうしん)

 顔色や舌を目で見ます。「気・血・水」の状態は、顔色にも現れやすいとされています。顔色は、「気・血」が不足していると白っぽい、「血」が上昇して熱がこもると、赤っぽいなどを診ます。

 また、「舌診(ぜつしん)」では、舌の形や色から「水」の状態や、むくみ、胃の不調ほかを判断します。舌の裏の血管から、血が滞る「瘀血(おけつ)」の状態などを判断します。


③ 切診(せっしん)(腹診、脈診)

・腹診(ふくしん)

おなかに軽く触れながら、腹部全体の状態を診ます。軽く押しながら、筋肉の張り、腹部の弾力、痛みやかたまりの有無、脈打つところはあるか、などを確認します。

 たとえば、おなかがふくれ、押圧で痛みがあると「実証」。押すと痛みが和らぐのは「虚証」です。また、硬いかたまりがあると「瘀血」、かたまりがあっても押すと消えると「気滞(きたい)」と判断します。


・脈診(みゃくしん)

 脈診は、左右3か所ずつ、計6か所を触れます。病状が急性期のときは、脈診を重視し、逆に慢性期には腹診を重視します。

 脈診では、軽く触れて、脈が得られるときは、発病の初期です。肌の深い部分で脈を感じると、病状が体内に停滞している状態です。脈拍が速いときは、「気・血」の流れが速い状態と判断します。


④ 問診(もんしん) 

 患者さんから直接、病気や不調の状態、過去の病歴、日常生活の様子などを聞き取る診察です。

 西洋医学でも問診は行いますが、漢方(東洋医学)独特の問診の内容は、熱、汗、痛み、飲食、口渇、大小便、睡眠、生理などについても聞きます。患者さんから、主観的な自覚症状を聞くことを、漢方では特に大事にしています。


 これが漢方(東洋医学)で特徴的な診察法「四診」です。4つの手法で、患者さんの今の状態を把握します。


 「四診」の結果を総合的に判断して、「虚証(きょしょう)、実証(じっしょう)」「陰(いん)、陽(よう)」「気・血・水」などの「証(しょう)」を診断して、漢方薬の処方などの治療方針を決めるのです。


漢方専門医の探し方

「一般社団法人日本東洋医学会」漢方専門医検索で全国の各診療科の専門医が検索できます。


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  • 増田 美加 (女性医療ジャーナリスト)

    女性誌や女性専門サイトで、女性の医療&健康・美容現場を取材&執筆。2006年に乳がんを経験。検診の啓発、更年期への対策、予防医学の視点より、健康で美しくイキイキと生きるためのエイジングケア講演を行う。

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