ホルモン補充療法

【更年期】ホルモン補充療法(HRT)の思わぬメリットとは!?

  • 更新日:2020/04/05

 更年期障害の治療のファーストチョイスと言われているホルモン補充療法(HRT)。ホルモン補充療法(HRT)には、更年期の症状を軽減させるだけでない、さまざまな副効用があります。では、更年期の女性にとって、ホルモン補充療法(HRT)は具体的にどんなメリットがあるのかをご紹介します。


もちろん! つらい症状から解放されます

笑顔の女性

 症状の原因となる部分を直接改善するために、治療を行うことを原因療法(根本療法)と言います。それに対して、現れている症状を改善したり、やわらげたりする治療法を対症療法と言います。


 ホルモン補充療法(HRT)は、更年期の症状の原因である女性ホルモンのエストロゲンの不足を外から補う治療法ですから、原因療法(根本療法)と言えます。

 

 更年期世代に現れる特有の自律神経失調症状に有効です。ほてりや多汗、冷え、めまいなどの症状をそれぞれ別々に治療するとなると、さまざまな診療科を受診し、何種類もの薬が必要になります。

 しかし、ホルモン補充療法であれば、更年期障害の多くの症状を一度に改善する作用があり、総合的な効果が期待できます。

 また、ある程度、短期間で効果が現れるのも、特徴のひとつです。自律神経失調症状に対しては、3カ月前後の治療で約8割の人が「効果あり」と答えている報告があります。


セロトニンと関係。気分を明るくする効果も!

セロトニン

 エストロゲンには、心をウキウキさせ、気分を明るくする作用があります。ホルモン補充療法(HRT)を受けた多くの女性が、気分が明るくなったという感想をよく聞きます。


 セロトニンとの関係もあります。女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少することで、脳内の神経伝達物質セロトニンが不足します。

 セロトニンは、脳内で働く重要な神経伝達物質。セロトニンの合成能力には男女差があり、女性は男性より合成能力が低いことがわかっています。


 脳内で精神安定の働きを担うセロトニンが不足すると、精神の安定が崩れやすくなり、イライラ、不安、悲しみ、怒り、恐怖、緊張など、さまざまなネガティブな感情が暴走しやすくなり、うつ病の症状とも重なります。

 うつ病を発症する女性は、男性よりも2倍多いことから、女性が脳内でセロトニン不足を起こしやすいことがわかります。

 

 エストロゲンには、セロトニン神経系の働きを助け、不安や焦燥感を抑える作用があります。エストロゲンとセロトニンは同調するため、エストロゲンが欠乏することで、セロトニン神経の機能が低下し、セロトニン濃度も減少します。


 このように、女性ホルモンが急激に変化する更年期は、セロトニンの減少も相まって、うつ病をはじめとする心の不調を起こしやすいのです。

 ホルモン補充療法(HRT)でのエストロゲンの補充によって、心の不調改善にも効果があります。


腟のヒリヒリや性交痛の改善

腟のヒリヒリ

 腟のヒリヒリ感や性交痛など、人には言いにくい悩みを、多くの人が感じています。


 エストロゲンには、皮膚だけでなく、粘膜組織も強くして、みずみずしく保つ働きがあります。エストロゲンが減少することで、腟粘膜が乾燥、萎縮し、ヒリヒリ感、性交痛などが起こる萎縮性腟炎なども起こしやすくなるのです。


 ホルモン補充療法を行うことによって、腟粘膜のうるおいも改善します。


若々しい肌を保つアンチエイジング効果も

アンチエイジング効果

  更年期からはエストロゲンの減少によって、肌のコラーゲンや角質水分量が失われていきます。

 できてしまったシワやシミは消せませんが、エストロゲンを補充することでコラーゲンが増えたり、肌の水分量をキープできるなど、若々しさを保てる効用があります。


 また、蟻が背中を張っているような皮膚の違和感(蟻走感)や全身の皮膚のかゆみ、かさつきの改善にもつながると言われています。


減少する骨量に歯止めをかけます

 更年期は、のぼせやほてり、多汗のような目立った症状に注目しがちですが、その水面下では、大きな自覚症状を感じないまま、骨粗しょう症や動脈硬化などの慢性的な症状が進行する危険があります。

 女性の骨量は、30代半ばをピークに減り続け、閉経後数年から10年ほどで、2~3割も減少してしまいます。

 つまり、何も予防的対策をしなければ、平均的な閉経年齢の50歳ころから骨量の減少は進んできて、骨粗しょう症が始まってくる可能性が高くなるのです。若いときに無理なダイエットをした人はもっとリスクが高く、40歳前半で骨粗しょう症の人もいます。

 

 さらに、60代に入ると、腰や背中などに痛みや骨折などのはっきりした症状が現れ始め、65歳以上で半数近くの人が、80歳以上では約7割以上の人が骨粗しょう症にかかっていると言われています。


 このように加齢とともに進む、骨量の減少をくい止めて、骨粗しょう症を予防することに、ホルモン補充療法が効果を発揮します。

 デンマークの研究(1981年)ですが、ホルモン補充療法(HRT)を行っていない人は骨量が減少していくのに対して、36ヵ月間、ホルモン補充療法(HRT)を行っていた人は、骨量が増加していたという報告があります。こうしたことから、骨粗しょう症の予防的治療としても取り入れられています。


血管を守って心筋梗塞、脳梗塞、認知症の予防にも

病院

 動脈は、全身に血液を送り込んでいる重要な血管です。動脈硬化は、動脈が老化や病気などによって弾力を失い、硬くなったり、もろくなった状態。


 動脈硬化があると、心筋梗塞や脳梗塞など、心疾患や血管障害の発生率が高くなります。これらの病気は50歳ころまでは、男性の発症率が圧倒的に高いのですが、50歳以降では女性も高くなり、60代以降では男性と同じになります。

 女性は、それまでエストロゲンの作用でコレステロールの増加が守られていたのですが、閉経によるエストロゲンの減少で、一気にそのバリアがなくなってしまうのです。


 エストロゲンには、悪玉コレステロールを低下させ、善玉コレステロールの合成を促進させる作用があります。動脈硬化を防ぐ効果もありますから、ホルモン補充療法(HRT)を行うことで、心筋梗塞や脳梗塞などの病気予防にも役立ちます。


 また、アルツハイマー型認知症と女性ホルモンの関係も徐々にわかってきています。

 ホルモン補充療法(HRT)が、アルツハイマー型認知症の発症率を減らすことが臨床試験データで少しずつ報告されています。しかしまだ、確実なデータではありません。

 アルツハイマー型認知症は女性に多いため、ホルモン補充療法(HRT)の予防効果について今後の研究結果が期待されます。


大きな効果が現れない場合も

女性の心

 このように、さまざまな副効用があるホルモン補充療法(HRT)ですが、完全ではありません。

 一般にホルモン補充療法(HRT)は、のぼせやほてりなどのホットフラッシュ、多汗、動悸、息切れなどの血管運動系の症状によく効きます。


 しかし、不安やうつ症状など、精神心理的な症状が強いときには、ホルモン補充療法(HRT)だけでは、治療が難しいことがあります。


 そういう場合にはホルモン補充療法(HRT)と並行して、SSRIやSNRI、自律神経調整剤などを用いたり、カウンセリングを行って心の不安や葛藤を取り除いていく方法があります。そうすることで、ホルモン補充療法(HRT)の効果が現れやすくなります。


 また、ホルモン補充療法(HRT)は、萎縮性腟炎や性交痛など、腟粘膜の萎縮には、効果を発揮しますが、頻尿や尿失禁などの尿道粘膜や骨盤底筋群などへの効果は、腟粘膜の萎縮症状に比べると少し下がると言われています。


 整形外科的な腰痛やひざの痛みなどは、エストロゲンの減少だけでなく、関節や軟骨の老化や、既に骨粗しょう症が始まっているなども考えられるため、ホルモン補充療法(HRT)が必ずしも有効とは言えません。



▼バックナンバー

・更年期障害は治療できる!ファーストチョイスとなるホルモン補充療法(HRT)とは?


・更年期症状で受診したら、婦人科ではどんな検査をする?


・更年期になると“太る!”をくつがえす方法はあります!


・不眠、寝つきが悪い、眠りが浅い…更年期によく起こる不眠障害をどう乗り越える?


・意味もなくイライラして人にあたる。逆に、落ち込んで気分がふさぐ…。両方とも更年期の心の症状です


  • 増田 美加 (女性医療ジャーナリスト)

    女性誌や女性専門サイトで、女性の医療&健康・美容現場を取材&執筆。2006年に乳がんを経験。検診の啓発、更年期への対策、予防医学の視点より、健康で美しくイキイキと生きるためのエイジングケア講演を行う。

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