婦人科

更年期障害は治療できる! ファーストチョイスとなるホルモン補充療法(HRT)とは?

  • 更新日:2020/03/22

 更年期の症状の現れ方には、個人差が大きくあります。「つらくて、つらくて一刻も早く楽になりたい」「それほどつらくはないけれど、不調を少しでも減らして快適に過ごしたい」と思う人などさまざまです。更年期症状の治療は、複数あります。どれを選ぶのか、そのコツと更年期障害の治療のファーストチョイスとなるホルモン補充療法(HRT)についてお伝えします。


自分がどうしたいのかを医師に伝えることで

患者と医師

 更年期の不調の改善には、まず自分はどうしたいのか、を婦人科の医師に伝えて、医師と一緒に治療法を考えていくことが大事です。

 また、治療を進めていくときには、いくつかの療法を組み合わせていくことが少なくありません。


 気になることや希望があれば、医師に尋ねたり、希望を伝えましょう。また試してみたい治療法があれば、医師に相談して、自分にとってベストな治療法を考えいくことも可能です。


選択できる治療法はいろいろ、組み合わせもOK!

病院

 おもな治療法には、ホルモン補充療法(HRT)、漢方薬、SSRIやSNRIなどの精神科のお薬やカウンセリングなどがあります。


 ホルモン補充療法(HRT)は、更年期から急激に減少する女性ホルモンを外から補うことで、更年期に起こるさまざまな症状を改善する治療法です。健康保険が使えます。

 特に、ホットフラッシュ(ほてりや多汗)、動悸など、全身のあちこちに現れる自律神経失調症状は、この治療法だけで一気に軽減されることが少なくありません。

 ホルモン補充療法(HRT)の副作用の情報が一人歩きして怖がる人がいますが、この治療法がもっているメリットに、もっと注目してもいいと思います。


 漢方薬も、更年期の症状改善に期待できます。特に冷え症、ほてり、肩こり、便秘、むくみなどの不調は、漢方の得意分野です。漢方療法だけで更年期症状が改善される人もいます。

 また、ホルモン補充療法(HRT)、精神科領域のお薬(SSRI、SNRI)と併用して使われることも少なくありません。


 更年期は、体の変化だけでなく、社会的にも家庭環境にも、大きな変化が見られる時期。ストレスや疲れなどから更年期うつなどの精神症状が強く出ることもあります。


 こうした場合は、心療内科や精神科などを受診して、心の専門家に相談することも大切です。カウンセリングを受けて、心の問題を整理していくこともできます。また、うつや不安などの精神神経症状がおもな症状の場合や、ホルモン補充療法(HRT)が無効な場合には、SSRIやSNRIなどが使用されています。


変動するエストロゲンを補うのがホルモン補充療法(HRT)

ホルモン補充療法

 現在、更年期障害の治療のファーストチョイスと言われているのが、ホルモン補充療法(HRT)です。不安定になっている女性ホルモンを外から補う方法です。


 更年期のさまざまな不快症状は、卵巣の機能が低下することにともなって、女性ホルモンのエストロゲンが急激に減少したり、分泌が不安定になったときに起こります。その急激な変化が体や心にとって大きなストレスになるのです。


 一般にエストロゲンの血中濃度が1㎖中 50pg(ピコグラム= 1gの1兆分の1)以下になると、更年期の症状が出やすくなると言われています。

 そこで、外から飲み薬や貼り薬、塗り薬などによって、少なくなったホルモンを補ってあげて、ホルモンの急激な減少に体が無理なくついていけるようにしようというのがホルモン補充療法(HRT)です。


女性の体のライフサイクルは飛行機の離着陸と同じ

飛行機

 女性ホルモンにともなう女性の体のライフサイクルは、飛行機の離着陸にたとえられます。飛行機の離陸が思春期で、着陸が更年期です。


 エストロゲンの分泌が急激に増加するのが思春期。思春期にもさまざまな心と体に変化があります。そして、ホルモンが変動しつつ、減少して着陸時に衝撃を感じるのが更年期。


 そこで、なくなりつつある女性ホルモンを外から補うことで、着陸の衝撃を和らげて軟着陸させるのがホルモン補充療法(HRT)。


ホルモン補充療法(HRT)は更年期障害の治療として欧米では主流

アメリカの治療

 ホルモン補充療法(HRT)は、現在、最も有効な更年期障害や更年期症状の治療法として欧米では主流です。

欧米では、15年~20年もの実績があり、最も普及率の高いオーストラリアでは56%、欧米では30~40%の普及率ですが、日本では1.7%の普及率となっています。

 欧米では更年期障害のスタンダードな治療法となっており、貼るタイプや塗るタイプのホルモン剤による治療が一般的になってきています。


 しかし、日本での普及率は、まだまだ少ない現状があります。「更年期の症状は、病気ではないから、自然に任せるべき」「ホルモンは怖い」という日本人独特の価値観や副作用への不安があるようです。


 どんな薬にも、体に良い効果もたらす主作用があれば、必ずそれにともなう副作用もあります。

 大切なことは、ホルモン補充療法(HRT)の長所と短所を正しく理解して、自分の体調やリスクをよく考えて、自分で納得して使うこと。

 日本でも婦人科でホルモン補充療法(HRT)が広まりつつあり、相談にのってくれる医療機関も増えています。


ホルモン補充療法(HRT)の誕生若返り秘話

ピル

 ホルモ補充療法(HRT)の誕生の歴史を少しお話します。実は、ホルモン補充療法(HRT)は、ピルの若返り効果がきっかけで誕生しました。


 ホルモン補充療法は1960年代にアメリカで開発。ある婦人科医がピルを常用している女性が年齢より若々しいことに着目。研究を重ねることで、ピルに含まれている女性ホルモンのエストロゲンが若さを保つのに効果があり、しかも更年期の症状を改善することがわかり、エストロゲン剤が更年期の治療に使われるようになりました。


 ただ、エストロゲンだけを用いた初期のころのホルモン補充療法は、子宮体がんの増加という副作用が現れました。

 しかし、その後、さらに研究が進んで、1970年代からはエストロゲンとプロゲステロンを併用することで、むしろ子宮体がんの発生が抑えられてきて、骨粗しょう症や脂質異常症などの予防にも役立つことがわかりました。


 現在、ホルモン補充療法(HRT)は、更年期障害の治療法のファーストチョイスと考えられています。


 次回は、ホルモン補充療法(HRT)を行うことのメリット(若返り効果!?)とリスクについてご紹介していきます。



▼バックナンバー

・更年期症状で受診したら、婦人科ではどんな検査をする?


・更年期になると“太る!”をくつがえす方法はあります!


・不眠、寝つきが悪い、眠りが浅い…更年期によく起こる不眠障害をどう乗り越える?


・意味もなくイライラして人にあたる。逆に、落ち込んで気分がふさぐ…。両方とも更年期の心の症状です


・薄毛、抜け毛、髪のコシがない、爪が割れやすいのも更年期のせい?


  • 増田 美加 (女性医療ジャーナリスト)

    女性誌や女性専門サイトで、女性の医療&健康・美容現場を取材&執筆。2006年に乳がんを経験。検診の啓発、更年期への対策、予防医学の視点より、健康で美しくイキイキと生きるためのエイジングケア講演を行う。

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