卵子凍結

【卵子凍結の基礎知識】凍結卵子を使用した場合の出産率は?

  • 更新日:2019/12/25

2014年、Facebookが福利厚生の一環として、卵子凍結費用のサポートをすると公表しました。その後、後追いする形で、YahooやNetflix、Appleなど大手企業が次々と同様の福利厚生をスタートさせています。


日本でそういった福利厚生を大々的に発表している企業は目につきませんが、日本国内でも卵子凍結に対する認知度と注目は高まってきているように感じます。


ですが、卵子凍結について興味はあるけれど、肝心の「凍結しておいた卵子を使ったら、どのくらいの確率で出産できるのか」については知らない方が案外多いのではないでしょうか。


ということで、今回は、知っているようで知らない卵子凍結の基礎知識を、医師の藤原敏博先生と生殖補助医療胚培養士の高柳明音先生の共著『不妊のトリセツ』を参考に解説していきます。


卵子凍結にはふたつの種類がある

卵子凍結は、ふたつの種類にわけられます。「医学的適応」と「社会的適応」です。


卵子凍結の種類

医学的適応:がんやがんによる放射線治療や抗がん剤によって将来の妊娠が望めなくなる可能性がある人

社会的適応:健康な女性が現状で出産する予定はないが、将来子供が欲しい時のために、加齢による卵子の老化を懸念して行う

(P.80)

よく私たちが話題にする卵子凍結は、「社会的適応」の卵子凍結です。医学会による卵子凍結に関する考え方は、医学的適応か、社会的適応かによって考え方がまったく異なるといいます。


医学的適応に関しては、日本産科婦人科学会、日本生殖医学会、アメリカ生殖医学会のすべてが推奨しているのに比べて、社会的適応については、日本産科婦人科学会、アメリカ生殖医学会は推奨しておらず、日本生殖医学会に関しては「40歳以上での排卵・凍結、45歳以上での凍結卵子の使用は推奨しない」といいます。


社会的適応の卵子凍結が推奨されないのはナゼ?

考える女性

卵子凍結を福利厚生として取り入れている会社もあるというのに、なぜ社会的適応の卵子凍結は医学会に推奨されていないのでしょうか? そこには3つの理由があるといいます。


社会的適応の卵子凍結が推奨されない理由

・凍結卵子を使用した場合の妊娠率の低さ

・健康な女性に対しての採卵時の身体的負担

・高齢出産のリスク

(P.81)

採卵時、身体的負担があることは否めません。「一回採取したら終わり」ではなく、凍結卵子を使用した出産を望む場合、たくさんの卵子を採取しておく必要があるからです。


なぜなら、卵子凍結のための技術は精子や受精卵の凍結に比べて技術的にかなり難しいため、凍結後、融解する過程でストレスに耐えられず、死んでしまう卵子が出てくる確率が高いからです。


たとえば、卵子を20個凍結していたとしても、そのすべてが融解できるわけではありません。融解の時点で使える卵子は減り、その後、受精する卵子、胚盤胞になる胚…とどんどん数は減っていくので、最終的に出産するためには、最初からそれなりの卵子の数を確保しておくことが必要になるのです。


では、いったい一人を生むためには卵子を何個凍結しておくべきなのでしょうか。


本書では、「90%以上の確率で1人を出産するためには、35歳以下で20個、40歳以下で70個、42歳以下で100個の卵子が必要。ただし、この個数分の卵子があれば、必ず1人妊娠できるという訳ではない」としています。


凍結卵子を使用した場合の出産率は?

出産

凍結卵子を使用して妊娠する場合には、数多くの卵子を用意しておく必要があることをここまでご紹介しました。

気になるのは、実際に凍結卵子を使用した場合の出産率でしょう。

(凍結卵子を使用した体外受精の場合、)30歳〜36歳の出産率が8%、37歳〜39歳では3%となっており、通常の体外受精の出産率において、前者が約20%、後者が約10%であることを鑑みても、非常に低く、現段階で効率の良い方法ではないことがわかります。また、社会的適応で卵子凍結を行った後、その人たちが卵子を使わずに、そのままというケースも多いため、統計をとる際の分母自体が非常に少ない点も、論文によって必要な個数や出産率のバラツキが大きく、しっかりした数字を出しにくい原因の一つになっています。(P.83)

卵子凍結については比較的近年に広がった現象であるため、まだまだしっかりした数字を出すのは難しいようです。ですが同時に、現時点で確認できる統計調査では、「凍結卵子を使用した出産率は高いとは言えない」というのが事実のようです。


さいごに。出産率が低いから卵子凍結には意味がない、というわけではない

妊娠検査薬

今回は、卵子凍結の基礎知識と出産率について解説してきました。「せっかく凍結しても、出産率ってこんなに低いんだ…」とがっかりされた方もいらっしゃるかもしれません。


ですが、様々な理由で「今は妊娠・出産できる状況ではないけどいずれ子どもがほしい」と考えている女性にとって、「若いときの卵子を凍結している」ことは、「あの凍結卵子があるから今は安心して仕事に打ち込める」など、ある意味保険をかけているような安心感にもつながる場合があります。


「凍結卵子があるからいつでも出産可能」と思い込むのは危険ですが、凍結しておくことで安心感が増し、日々の生活の質を向上させることができるのならば、卵子凍結をしておく、というのもひとつの手でしょう。


今回ご紹介した本

『不妊のトリセツ』

著者:藤原敏博・高柳明音

出版社:あさ出版



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  • 今来 今 (フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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