ビューティー

「キレイになりたい」人に読んで欲しい話。美の追求は割に合う?

女性を幸せにする本

突然ですが質問です。

神様が目の前に現れて、次のふたつのうちどちらかの願いを叶えてくれるとしたら、あなたはどっちを選びますか?


①「誰もが振り返るような絶世の美女にしてあげる」

②「あなたが欲しい才能(知性・創造性・体力etc)、なんでも求めるものを世界一のレベルにしてあげる」


ちなみに私は、悩んだ末に、美女になることを選ぶような気がします。仕事も好きで、創作活動にも日々精を出している私にとって、仕事の能力や、限りない創造性は喉から手が出るほど欲しいものです。自分だけしか創れないものを生み出せたときの喜びは、何ものにも変えがたいと本気で思っています。


でも、それ以上に、容姿が与えてくれる恩恵が魅力的に思えて仕方がないのです。

女性なら誰でも、「もっと美人だったら」と思ったことがあるでしょう。これまでにファッションやメイク、ネイルに費やした時間が、読書や勉強に費やした時間よりも多い、という人も少なくないはずです。

それほど、女性にとって「美しくいること」は至上命題なのです。


近年、男性用化粧品やミスターコンテストなど、若い男子が容姿に敏感になりつつある兆しは見えますが、女性の比ではありません。


なぜ、私たち女性はこれほどまでに容姿を磨くことに情熱を注いでしまうのでしょうか。そして、そうすることで、誰が得をし、どういったリスクがあるのでしょうか。


今回は、スタンフォード大学法科大学院教授・デボラ・L・ロード著『キレイならいいのか』をテキストに、女性がルックス磨きに追い立てられる理由とリスク、対策について考えていきたいと思います。


女性は業績や知性よりも、ルックス・ファッションに着目されがち

ファースト・レディになったミシェル・オバマは、ゴシップ誌に度々登場し、「ドレスは〇〇というデザイナーのもの、価格は○万円」などと書き立てられていました。一方のオバマ大統領は、公式の場で8年間同じタキシードスーツを着ていたのに、誰もその事実に気がついていなかったといいます。(※1)


また、2008年に共和党副大統領候補として出馬したサラ・ペイリンは「外交政策顧問よりもメイクのプロに高級を払った」といいます。


アメリカの政治に目を向けるまでもなく、「あの人、仕事はできるけど、ファッションセンス(もしくは容姿)がちょっと残念」と影で言われている女性を見たことがある人も少なくないはずです。


女性は、仕事の実力や業績とは関係なく、ルックスやファッションセンスが微妙だという理由で、非難されたり軽んじられることが少なくないのです。


容姿は恋愛だけでなく、就職・昇進に影響を与える

女性の容姿

こういった容姿による不利益を被るのは、もちろん女性だけではありません。肥満の人が多いアメリカでは、太っているというだけで、男女ともに偏見にさらされ、不利益をこうむりがちだといいます。


体重過多の人を対象にした調査で、就職にあたって差別を受けた経験があると答えたのは女性の60パーセント、男性の40パーセントに上る。研究者たちがいつも指摘することだが、体重過多ゆえに収入の面でかなり損をすることがしばしばある。女性はなおさらである。肥満女性は、仕事のうえで有利になる他の特性を備えていたとしても、肥満のゆえに貧困に陥りがちである。(P.73)


また、太っているか否かに関わらず「魅力的でない人は就職や昇進の機会が少なく、知的能力の点では容姿の優れた人との差が認められないにもかかわらず、受け取る給料も少ない」という調査もあると著者は指摘しています。


美しさという「終わりなき幸福の追求」はハイリスク

過剰なダイエット

また、女性の容姿の美しさは、恋愛・結婚市場において高値で取引されがちです。リッチな中年男性と美しい女性の結婚は、「顔と金の結婚」と揶揄され、「お互い中身なんて見ていないんだろう。金目当てだろう」といくら非難されたところで、減少する様子はありません。


恋愛や結婚だけでなく、就職や昇進などに置いても、容姿が重要視されるとするならば、女性たちが容姿の向上に時間とお金を投資することも、一見合理的な選択のように見えます。ただし、その時間とお金が本当に当人を幸せにするのかは疑問が残るところです。


実際には、美の追求が利益をもたらすこともある一方、当人に多大なダメージを与えるだけに終わる可能性も少なくはないのです。


若い女性の摂食障害がその一例です。美を追求することによって、健康をも概してしまう女性は少なくありません。美容整形にも失敗するリスクがあります。成功したとしても、メンテナンス費用を捻出するために、大きな金銭的代償を支払う必要が出てくるのです。


また、最大のリスクは、美の追求に終わりがないことです。


矛盾しているのだが、容姿は重要だが、それでも容姿を磨こうと専心したからといって、生活の質が格段に向上することはない。他の形の消費と同様に、容姿に対する投資は永続的な満足感を与えてくれないことが多い。(略)いったん満足すると、さらなる欲望や期待が湧き、比較基準は跳ね上がる。テクノロジーの進歩や市場の圧力は、身体的な完璧さの基準をつねに押し上げている。(P.77)


つまり、美を追い求め一時的には満足感を得られても、その満足感はすぐに欠乏感へと変わってしまうのです。


個人が美しさを追求することで、得をしているのは誰?

メイクする女性

本書では、「フィジーにテレビが導入されてから3年で、摂食障害が劇的に増え始めた」という例が紹介されています。テレビなどのメディアの登場が、女性を終わりなき美の探求に追い立てる一因であることは明らかでしょう。


石原さとみの顔と比べたら、ほとんどの女性は自分の顔面に絶望してしまうはずです。女性誌のカバーガールとして微笑む石原さとみが、何万倍の確率をくぐり抜けて選ばれた美女であり、さらにフォトショップで肌を極限までなめらかに見えるように加工されていると薄々知りながらも、非現実的な「理想の容姿」を女性は追求してしまいがちです。


「ハーフ顔メイク」を推奨し、西洋風の目にするために目頭切開をした女性を雑誌の顔として読者モデルに抜擢し、栄養失調ぎりぎりの細身のモデルを起用することは、標準体型の日本人である女性たちにとって有益なことだとは思えません。


読者・消費者が利益を得ていないとしたら、誰が利益を受け取っているのでしょうか? それは、美容やダイエット関連業界で商品を提供している人たちです。


金銭的な面からいえば、身だしなみへの投資額は全世界で年間1150億ドルを下らない。ヘアケアに380億ドル、香水に150億ドルである。また、アメリカ人はダイエットに400億ドルを投じ、それを少し上回る金額をフィットネスのために使っている。(P.81)


さいごに

笑顔の女性

現代日本に生きている限り、美しさを追求することから完全に自由になることは難しいでしょう。

ただし、与えられる情報を鵜呑みにせず、背景を考えることで、美しさの追求によるリスクを回避することはできます。


まずは、広告を信用しすぎないことが大切です。美容業界の販売戦略は、「消費者の自己不全感をあおり、それにつけ入ることから始まる」ことも多いのです。著者は「消費者は、化粧品や美容処置は効果を上げる確率が低く、健康リスクを伴うことをもっとよく知るべきだろう」と指摘しています。


バービー人形のような大きな胸とウエストのくびれは現実的か、また、与えられた美の基準を追求することが本当に自分を幸せにしてくれるのか、個々人が考える必要があるでしょう。


私もいつか、「美しさよりも、能力が欲しい」と言える自分になるために、与えられた美しさの基準を疑える強さを持ちたいと思います。


※1 FRONTROW



今回ご紹介した本

『キレイならいいのか――ビューティ・バイアス』

著者:デボラ・L・ロード

翻訳者:栗原泉

出版社:亜紀書房





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  • 今来 今(フリーライター)

    神戸出身。編集者を経て現在フリーライター。複数メディアにて、映画評・書評・ルポなどを連載中。

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